第2四半期決算を発表したファナック(6954)の財務、株価分析

2016/11/02

企業分析


①事業

・事業概要

 ファクトリーオートメーション(FA)の総合的なサプライヤとして、CNCシステム(CNCおよびサーボモータ)、レーザ、ロボット(ロボットシステムを含む)およびロボマシン(ロボドリル(小型切削加工機)、ロボショット(電動射出成形機)、ロボカット(ワイヤカット放電加工機)、ロボナノ(超精密ナノ加工機))など、CNCシステムの技術をベースとし、自動化による生産システムに使用されるものの開発、製造、販売ならびに保守サービスを実施。


 平成27年4月に新たな株主還元方針を定め配当性向を従来の30%から60%へと引き上げた。


・地域別売上

 日本19%、アジア43%、北米23%、欧州15%(H28.3期)と日本以外のアジアへの依存度が高い。


・主要子会社(数値はH28.3期)
 ファナックアメリカ 100% 売上143十億円、当期利益19十億円、純資産90十億円
 ファナックヨーロッパ 100% 売上96十億円、当期利益8十億円、純資産79十億円
 コリアファナック 94% 売上71十億円、当期利益9十億円、純資産96十億円


・株主
 浮動株主が多いが金融機関株主比率28%、外国人株主比率が54%と高い点に特徴がある。


・主要な顧客への売上
 H27.3期⇒サムソン93十億円
 H28.3期⇒10%超を占める先なし


・重要な契約
 シーメンス社(ドイツ)とCNCシステム、CNC自動プログラミング装置、ロボットに関して特許実施権の相互供与契約を昭和58年から締結中。


詳細な数値分析はこちら。




②業績


・売上

 H28.9期は全ての部門の売上が前年比で50%以下となり苦戦した。

 特にロボマシン部門が前年比で26%と大幅に売上減少となった。

 IT関係の一時的需要が前上半期に収束したことによる反動減とのことである。



・営業利益

 H28.3期の親会社単体の総製造費用のうち65%(H27.3期は69%)は材料費である。
 ちなみに、労務費は45十億円で18%を占める。

 H28.3期の連結PLの販管費のうち35十億円(H27.3期も35十億円)は給与等の人件費である。

 H28.3期の売上総利益率、営業利益率はH27.3期と比べて、それぞれ低下している。
 これは、売上原価に含まれる固定費(人件費、減価償却費など)があるため、売上高の増減により売上総利益率が変動することによるものである。つまり売上増加すれば利益率は改善し、売上減少すれば利益率は悪化することになる。

 一方、売上が減少すれば利益率も悪化することになる。

 H28.9期は前年同期比で売上が27%減少したため、固定費負担が重くなり、売上総利益率、営業利益率、最終利益率が全て悪化した。
 これにより、営業利益額は38%減、最終利益額は35%減と大幅減少となった。



・親会社帰属利益

 H28.9期は上記の通り売上の減少、営業利益率の悪化により最終利益額も大幅悪化となった。

 また、営業外費用として円高による為替差損4十億円も計上されている。



③キャッシュフロー



・営業キャッシュフロー

 安定して営業CFを獲得しており税引後利益+減価償却費以外の大きな増減はない。



・投資キャッシュフロー

 投資CFはH28.3期、H29.3期は比較的積極的に行なっている。
 壬生工場や本社事業所並びに工場における研究設備等であると考えられる。



・財務キャッシュフロー

 財務CFは自己株取得、配当支払いによる支出が大部分である。




④財務状況


・流動資産、流動負債

 H28.9期におけるファナックの流動資産1,008十億円のうち、現預金が635十億円、有価証券が145十億円と大部分を占める。また、流動負債102十億円は仕入債務、未払税金等である。


・固定資産

 H28.9期におけるファナックの固定資産471十億円のうち土地が131十億円、その他の有形固定資産が253十億円を占める。
 のれん、無形固定資産は4十億円程度しかない。

 H28.3期にナブテスコ株を買い増しし投資有価証券のBS額は5,190百万円増加しナブテスコ株残高は9,296百万円となった。


・自己資本、調達資金

 H28.9期におけるファナックの自己資本比率は88%、金額にして1,301十億円と財務内容は非常に安定的であるがH28.3期と比べると親会社所有持分は27十億円減少している。

 円高を原因とする為替換算調整勘定のマイナスインパクトが28十億円、持分法適用会社のマイナスインパクトが8十億円あったことが原因である。



⑤株価分析

・業績予想の達成可能性

 年間予想売上に対するH28.9期の売上進捗率は51%であり、年間予想営業利益率26.8%、年間予想最終利益率20.7%はH28.9期実績営業利益率、最終利益率よりも保守的である。
 つまり、年間予想売上を達成できれば営業利益、最終利益の上ブレ可能性は十分に考えられる。


 ・PER
 
 H27.3時点では株価26,250円でありPERが24.7倍であったが、H28.9時点では株価は17,010円まで落ち込んだものの、一方で中間実績利益も下落したたため、中間実績利益にもとづくPERが27.4倍と割高感は依然として残っている。
 また、H29.3期利益予想と11/1終値に基づくPERは30倍を超えており、減収減益傾向にある中ではいまだに割高感がある。
  東証一部の電気機器平均が23.0倍であることを考慮すると、同業他社と比べるとまだ割安であると判断することはできる。


 ・PBR
 直近決算に基づくPBRはH28.9末時点の株価では2.8倍である。
 東証一部の電気機器平均が1.4倍であることを考慮すると割高であるとも判断できる。


 
 なお業種別PER、PBRのこちら。


 

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ファナック(6954)

(単位:百万円) H27.3 H28.3 増減 H28.9 進捗/増減
売上高 729,760 623,418 △106,342 257,108 41%
前年Q 349,969 73%
年間予想 501,900 51%
売上総利益 379,014 296,506 △82,508 116,296 39%
販管費その他 81,175 80,939 △236 37,896 47%
営業利益 297,839 215,567 78,400 36%
前年Q 127,341 62%
年間予想 134,700 58%
減価償却費(のれん償却含) 21,685 21,106 △579 10,695 51%
 EBITDA 319,524 236,673 △82,851 89,095 38%
支配株主帰属利益 207,599 159,700 △47,899 60,174 38%
前年Q 91,903 65%
年間予想 104,100 58%
H27.3 H28.3 H28.9 予想
売上総利益率 51.9% 47.6% 45.2%
営業利益率 40.8% 34.6% 30.5% 26.8%
支配株主帰属利益率 28.4% 25.6% 23.4% 20.7%
ファナック(6954)のセグメント業績(主なもの)
売上(百万円) H27.3 H28.3 増減 H28.9 進捗/増減
FA 206,611 170,211 △36,400 83,877 49%
ロボット 156,497 188,295 31,798 88,210 47%
ロボマシン 291,488 183,011 △108,477 47,414 26%
サービス 75,164 81,901 6,737 37,607 46%
売上(百万円) H27.3 H28.3 増減 H28.9 進捗/増減
日本 123,593 119,228 △4,365
米州 124,057 142,700 18,643
欧州 87,970 94,017 6,047
アジア 391,577 264,629 △126,948
セグメント 説明
FA CNC システム(CNC およびサーボモータ)、レーザ
ロボット ロボット(ロボットシステムを含む)
ロボマシン ロボドリル(小型切削加工機)、ロボショット( 電動射出成形機)、ロボカット(ワイヤカット放電加工機)、ロボナノ(超精密ナノ加工機)
ファナック(6954)の過去株価指標分析
(単位:円) H27.3 H28.3 H28.9 直近株価/予想B
株価 26,250 17,485 17,010 18,840
発行済株数 195,645,105 194,641,978 193,864,533 193,864,533
潜在株数 0 0 0 0
潜在株式考慮後時価総額 5,135,684 3,403,315 3,297,636 3,652,408
1株営業利益 1,522 1,108 809 695
1株利益 1,061 820 621 537
1株親株主持分 7,049 6,825 6,712
営業利益PER 17.2 15.8 21.0 27.1
PER 24.7 21.3 27.4 35.1
PBR 3.7 2.6 2.5 2.8
EV/EBIT倍率 14.3 12.6 17.0 22.4
EV/EBITDA倍率 13.3 11.5 14.9
ファナック(6954)の利益指標
H27.3 H28.3 H28.9 予想
ROE 15.1% 12.0% 9.2% 8.0%
ROA 12.9% 10.6% 8.1% 7.0%
ファナック(6954)のキャッシュフロー
H27.3 H28.3 増減 H28.9 増減
営業CF 222,912 140,633 △82,279 70,660 50%
投資CF △24,926 △112,677 △87,751 △48,950 43%
 フリーCF 197,986 27,956 △170,030 21,710 78%
財務CF △47,314 △169,572 △122,258 △54,056 32%
ファナック(6954)の財政状態
H27.3 H28.3 増減 H28.9 増減
現預金等 871,236 686,662 △184,574 635,128 △51,534
流動資産 1,273,355 1,072,770 △200,585 1,008,799 △63,971
流動負債 172,611 106,116 △66,495 102,223 △3,893
借入金(短期) 0 0 0 0 0
借入金(長期) 0 0 0 0 0
 借入計 0 0 0 0 0
ネット借入 △871,236 △686,662 184,574 △635,128 51,534
固定資産 338,271 440,125 101,854 471,518 31,393
固定負債 52,320 71,869 19,549 70,834 △1,035
純資産 1,386,695 1,334,910 △51,785 1,307,260 △27,650
非支配株主持分 7,518 6,427 △1,091 5,948 △479
親会社所有者持分 1,379,177 1,328,483 △50,694 1,301,312 △27,171
流動比率 738% 1011% 987%
固定長期適合率 24% 31% 34%
自己資本比率 86% 88% 88%
有利子負債比率 0% 0% 0%
ファナック(6954)の株主構成
H27.3 H28.3
政府 0%
金融機関 28%
金融商品取引業者 5%
その他法人 1%
外国法人等 54%
個人 11%
ファナック(6954)における従業員の状況
H27.3 H28.3
連結人員 6,327
親会社単体人員 3,042
親会社単体平均年齢 42.9
親会社単体平均年収 16,711 千円