IPO予定の安江工務店(1439)の財務分析と初値予想

2017/01/06

IPO


【事業】

設立:1975年6月
本社所在地:愛知県名古屋市天白区島田
事業内容:住宅リフォーム、新築住宅事業、不動産流通
業種分類:建設業
決算:12月
上場市場:JASDAQスタンダード
監査人:トーマツ
主幹事証券:東海東京
社長:安江博幸、昭和40年9月生まれ、平成4年麦島建設入社、平成6年当社入社


(事業内容)

愛知県内での住宅リフォーム事業(住宅リフォーム請負)、新築住宅事業(新築注文住宅請負)、不動産流通事業(不動産仲介、買取再販)の3事業を実施。

①住宅リフォーム事業

戸建住宅やマンション等へ、網戸の張り替えやその他の顧客の要望に対応するためのメンテナンスから、自然素材を使用したデザイン性の高いリフォーム・リノベーションや増改築に至るまで幅広い価格帯や客層に対応した総合的なリフォーム事業を展開。


②新築住宅事業

新築注文住宅の建築請負を行っております。坪単価50万円台の高級家具付き住宅「CASTELLODIPACE(カステロディパーチェ)」と、坪単価40万円台で豊富なプランの中から間取りをお選びいただけるキューブ型住宅「Storia(ストーリア)」の2種類の商品がある。


③不動産流通事業

中古住宅・土地等の不動産売買仲介業及び、不動産の買取再販をする事業を実施。
「中古住宅×リフォーム」の提供、また土地仲介の場合には「土地仲介×新築住宅」、土地再販の場合は「建築条件付土地×新築住宅」の取引がある。


(関係会社)

親会社単体のみであり連結子会社はない。


(上場時調達資金使途)

IPO実施時の増資に伴い調達する資金約3.6 億円は、新店舗開設設備資金200百万円、その他は運転資金として利用予定。



詳細な数値分析はこちら。


【損益】


(売上・売上総利益)

H27.12期は前年が9ヶ月決算であったため比較できないが、H28.9期3Qの売上進捗率は全体で63%とやや出遅れている印象である。

セグメント別で見ると、住宅リフォーム部門が売上の多くを占めるが、新築住宅事業が48%と特によくない印象である。

上記のとおりH28.9期の売上高の進捗率は良くないが粗利率が37.1%と前期比で2.9%改善したため売上総利益の進捗率は前期比68%と健闘している。

売上原価のうち外注費が90%を超えており、外注依存度が非常に高い点が特徴的である。



(販管費)

H28.9期の販管費進捗率は前期比69%でああり、比較的節約している印象である。

広告宣伝費が比較的多く、H26.12期(9ヶ月)で300百万円、H27.12期で275百万円、H28.9期で175百万円の計上がある。
その他は人件費が多くを占めている。


(営業損益)

上記のとおり、H28.9期の粗利額は前期比68%であるのに対し、販管費の新著率が69%と若干高くなってしまったため営業利益進捗率は64%と伸び悩んでいる。

また、営業利益率は粗利率が改善した一方、販管費負担が売上に対して重くなったため前期比と同様の4.7%となった。

直近のH28.9期においては3セグメントのうち主要の住宅リフォーム事業のみが営業黒字であった。


(最終利益)

各期とも若干の営業外損益や特別損益があるものの「最終利益÷営業利益」の指標は62%~69%と異常値ではない。

また、税効果に関してH26.12期において繰越欠損金税効果分120百万円があったものの、評価性引当額は計上されておらず税金資産として計上されたたため税金費用はマイナスとなっている。


【キャッシュフロー】


(営業キャッシュフロー)

H26.12期は簡易営業CFに対して実際の営業CFは大幅なマイナスであった。
前期の法人税の支払いが95百万円あったことや、棚卸資産の増加163百万円、仕入債務の減少159百万円があったためである。

一方、H27.12期は簡易営業CFに対して実際営業CFは169百万円のプラスであった。
法人税が納付でなく前年分の還付32百万円があったことと、棚卸資産の減少170百万円があったことが要因である。


(投資キャッシュフロー)

H26.12期は有形固定資産取得136百万円と投資有価証券の売却100百万円が見合いであった。
H27.12期は特筆すべき項目はない。


(財務キャッシュフロー)  

H26.12期は配当を14百万円実施していた。
その他の大部分は借入金の増減である。


【財政状態】
 

(財務諸表の特徴)

H27.12期、H28.9期ともに利益計上により自己資本比率、負債比率、流動比率ともに改善傾向にある。
財務諸表について特徴的なことはない。

(流動資産・負債)

「流動資産-流動負債」は毎期急増しており、純キャッシュが増加傾向にある。
一方、「流動資産-流動負債」(預金借入金を除くは)4億円程度のマイナスとなっている。理由は工事前受金が未成工事支出金、完工未収金よりも多額であるためである。


(固定資産)

自社所有の有形固定資産が多くあり、H28.9期において土地469百万円、建物235百万円を保有している。
主な内訳は以下のとおりである。

【H27/12時点】

土地280百万円、建物構築物10百万円 天白店(名古屋天白区) 店舗設備
土地168百万円、建物構築物48百万円 刈谷東浦店(愛知県知多郡東浦町)店舗設備
土地20百万円、建物構築物26百万円 大高モデルハウス(名古屋市緑区)ショールーム


(固定負債)

大部分は長期借入金である。H28.9期にH27.12期比較で100百万円の長期借入金の増加があった。


(自己資本、有利子負債) 

H27.12期、H28.9期と順調に利益計上しているため安定して純資産額は増加している。
自己資本比率、有利子負債比率も改善傾向にある。
ネット有利子負債についてはH27.12期にマイナス化しており資金余剰の状況にある。


(IPO調達資金が自己資本へ与える影響)

直近のH28.9期の純資産771百万円に対して、IPO調達資金は367百万円であり自己資本は約50%の増加となる。


【株価】


(将来見込み)

現状においては売上の急拡大は期待できないため、増資資金によるM&Aや地域拡大により事業を拡大していく必要がありそうである。
新築住宅事業や不動産流動事業へのてこ入れも必要である。



(PER指標)

直近決算期であるH28.9期の利益を単純年換算した利益と想定発行価格を前提としたPER(希薄化株式考慮済)は13.9倍である。


(PBR指標)

直近決算期であるH28.9期の純資産と想定発行価格による増資を前提としたPBRは1.3倍である。


(その他)

想定発行価格による増資とH28.9期の単純年間換算営業利益に基づいたEBIT倍率は4.6倍である。
キャッシュ余剰があるためEBITDA,EBIT倍率は低めに算出されている。



市場別、業種別PER、PBRの一覧はこちら。

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安江工務店(1439)

(単位:千円) H26.12 H27.12 増減 H28.9 進捗/増減
売上高 2,419,706 4,134,242 1,714,536 2,614,182 63%
年間予想 3,485,576 75%
売上総利益 799,160 1,415,166 616,006 968,921 68%
販管費 1,076,269 1,222,864 146,595 846,497 69%
営業利益 △277,109 192,302 469,411 122,424 64%
年間予想 163,232 75%
減価償却費 32,511 42,471 9,960 31,511 74%
 EBITDA △244,598 234,773 479,371 153,935 66%
支配株主帰属利益 △191,707 120,040 311,747 82,271 69%
年間予想 109,695 75%
※年間予想はQ数値を年次に単純換算した金額
H26.12 H27.12 H28.9 予想
売上総利益率 33.0% 34.2% 37.1%
営業利益率 -11.5% 4.7% 4.7% 4.7%
支配株主帰属利益率 -7.9% 2.9% 3.1% 3.1%
最終利益÷営業利益 69.2% 62.4% 67.2% 3.1%
安江工務店(1439)のセグメント情報
売上(千円) H26.12 H27.12 増減 H28.9 進捗/増減
住宅リフォーム 1,790,283 3,095,872 1,305,589 2,082,322 67%
新築住宅事業 549,384 886,579 337,195 425,379 48%
不動産流通事業 80,038 151,790 71,752 106,480 70%
営業利益(千円) H26.12 H27.12 増減 H28.9 進捗/増減
住宅リフォーム △272,359 121,585 393,944 146,721 121%
新築住宅事業 5,384 50,343 44,959 △21,186 -42%
不動産流通事業 △10,133 20,374 30,507 △3,111 -15%
受注高(百万円) H26.12 H27.12 増減 H28.9 進捗/増減
住宅リフォーム NA 3,036 2,135 70%
新築住宅事業 NA 777 418 54%
不動産流通事業 NA 68 106 156%
安江工務店(1439)のキャッシュフロー
H26.12 H27.12 増減 H28.9 増減
営業CF △479,280 331,972 811,252 0%
投資CF △51,225 25,057 76,282 0%
 フリーCF △530,505 357,029 887,534 0%
財務CF 202,050 △59,164 △261,214 0%
※簡易営業CF △159,196 162,511 113,782
安江工務店(1439)の財政状態
H26.12 H27.12 増減 H28.9 増減
現預金等 361,128 680,506 319,378 704,508 24,002
流動資産 907,295 1,010,871 103,576 1,017,442 6,571
流動負債 1,154,132 972,095 △182,037 813,842 △158,253
 流動資産ー流動負債 △246,837 38,776 285,613 203,600 164,824
 うち現金短借以外 △359,791 △491,208 △131,417 △408,912 82,296
有利子負債(流動) 248,174 150,522 △97,652 91,996 △58,526
有利子負債(固定) 142,791 166,147 23,356 266,830 100,683
 有利子負債計 390,965 316,669 △74,296 358,826 42,157
ネット有利子負債 29,837 △363,837 △393,674 △345,682 18,155
固定資産 941,946 835,351 △106,595 835,186 △165
固定負債 142,791 166,147 23,356 267,638 101,491
純資産 552,318 707,980 155,662 771,148 63,168
非支配株主持分 0 0 0 0 0
親会社所有者持分 552,318 707,980 155,662 771,148 63,168
流動比率 79% 104% 125%
固定長期適合率 136% 96% 80%
自己資本比率 30% 38% 42%
有利子負債比率 71% 45% 47%
安江工務店(1439)の利益指標
H26.12 H27.12 H28.9 予想
ROE -34.7% 17.0% 9.6% 9.6%
ROA -10.4% 6.5% 4.9% 4.9%
安江工務店(1439)の株式数,時価総額の見込み
上場前発行済株式 940,400 自己株式除く
上場時発行済株式 353,500
引受価額 1,039.6
上場時調達見込額 367,499 千円
調達後親会社所有者持分 1,138,647
直近株価 1,130 想定発行価格
時価総額 1,462,107
非支配株主持分 0
純有利子負債 △713,181
事業価値 748,926
潜在株 55,840 潜在株割合 4.3%
安江工務店(1439)の株価指標
指標 H26.12 H27.12 H28.9 予想
EBIT倍率 △2.7 3.9 4.6 4.6
EBITDA倍率 △3.1 3.2 3.6
営業利益PER △5.5 7.9 9.3 9.3
PER △8.0 12.7 13.9 13.9
PBR NA NA 1.3
安江工務店(1439)の株主構成
政府 0%
金融機関 0%
金融商品取引業者 0%
その他法人 0%
外国法人等 0%
個人 100%
*安江博幸(社長)49%
安江工務店(1439)における従業員の状況
H28.11
連結人員 104
親会社単体人員 104
親会社単体平均年齢 38
親会社単体平均年収 4,715 千円
※リフォーム事業74名、新築住宅事業13名、不動産流通事業3名、共通14名。