IPO予定のレノバ(9519)の財務分析と初値予想

2017/01/21

IPO


【事業】

設立:2000年5月
本社所在地:東京都千代田区大手町
事業内容:再生可能エネルギー発電事業、再生可能エネルギー開発運営事業
業種分類:電気ガス業
決算:5月
上場市場:マザーズ
監査人:あらた
主幹事証券:大和証券
社長:木南陽介、1974年生まれ、1998年マッキンゼー入社、2000年当社設立


(事業内容)

大規模太陽光発電、バイオマス発電、陸上風力発電、洋上風力発電、地熱発電等の複数種類電源(マルチ電源)の発電所を開発し、所有・運営することが事業の目的である。


①再生可能エネルギー発電事業

長期に亘る再生可能エネルギー発電所の所有と当該発電所による売電を実施。

大規模太陽光発電に関して連結子会社6社(株式会社水郷潮来ソーラーなど)と関連会社1社において、バイオマス発電に関しては関連会社1社(ユナイテッドリニューアブルエナジー株式会社)において発電・売電を行う。


②再生可能エネルギー開発・運営事業

新たな発電所の開発と運転開始済発電所の運営管理を実施。

事業開発スキームはSPCを設立し共同出資を募り、再生可能エネルギー発電所を建設、運転開始後売電収入から借入返済、余剰キャッシュを当社及び共同事業者へ分配する。
出資段階としてSPCの設立当初は、財務的な要因等からSPCへの出資比率を持分法適用水準とし、SPCが再生可能エネルギー発電所の運転開始後の売電による安定したキャッシュ・フローを計上できる段階から、順次出資比率を高め、SPCを連結子会社化する方針である。
発電所の保守・運営業務はO&M事業者が行い、SPCの運営管理は当社グループのAM事業者が行う。

上記特性から「再生可能エネルギー開発・運営事業」の業績は、「再生可能エネルギー発電事業」と異なり大きく変動する傾向にある。


※なお、プラスチックリサイクル事業はH29.5期第1四半期に事業売却による撤退済み。


(関係会社)

連結子会社11社、持分法関連会社5社

主な子会社:株式会社富津ソーラー(発電事業)、51%所有、売上872百万円、当期利益180百万円、純資産583百万円、総資産12,587百万円。


(上場時調達資金使途)

IPO実施時の増資に伴い調達する資金約5億円は、四日市ソーラープロジェクトに対する出資金100百万円、大津ソーラー匿名組合事業における追加持分の買い増し100百万円、その他太陽光、バイオマス、風力、地熱等の再生可能エネルギー発電所のプロジェクト先行資金337百万円へ充当される。


詳細な数値分析はこちら。


【損益】


(売上・売上総利益)

売上高は拡大傾向にあり、また、売上総利益率も売上増加にともない大幅改善傾向にある。

売上総利益率の向上はプラスチックリサイクル事業の縮小、撤退が要因かもしれない。

また、再エネ発電事業における売上原価は発電機械装置の減価償却費も含まれると考えられるが、当該事業における機械装置は定率法でなく定額法にて償却され、耐用年数は長くて8年でありFIT期間よりも短い。よって、パネルの取替えインターバルの期間が将来損益及び将来キャッシュフローに大きく影響を与えることになる。

H28.11期においてプラスチックリサイクル事業は期中売却したため大幅に売上、利益ともに減少している。プラスチックリサイクル事業における主な売り先として公益財団法人日本容器包装リサイクル協会向けがH27.5期に2,617百万円、H28.5期に2,150百万円があった。

一方、発電事業、開発運営事業は2Qでほぼ前年年間の売上に匹敵する水準である。

再エネ開発運営事業は変動性が高い点留意すべきであるが再エネ発電事業はFIT期間中は安定収益になると考えられる。



(販管費)

H28.5期の1,612百万円のうち主なものは、給与322百万円、役員報酬123百万円、賞与126百万円、運賃117百万円、のれん償却108百万円である。


(営業損益)

上記の通り、売上、粗利率、売上総利益は急拡大している。
一方、販管費はH28.8期において前年年間額に対する進捗率は52%と売上総利益額の増加率と比較すると大きく抑制されている。

これにより、営業利益率はH28.8期で44%と非常に高い割合になっており、また売上増加に伴って営業利益額も前年間費で117%と中間時点で前年年間数値よりも大きく上回っている。


(最終利益)

H27.5期は営業外特損項目として持分法投資利益238百万円、支払利息176百万円、段階取得による差益135百万円が計上されている。

H28.5期は営業外特損項目として支払利息768百万円、受取保険金1,352百万円、災害損失841百万円、固定資産圧縮損363百万円、非支配株主利益400百万円計上されている。

H28.11期は特別利益として関係会社株式売却益2,350百万円の計上があるため「最終利益÷営業利益」率が高い。
当該関連会社株式売却益は「プラスチックリサイクル事業」を営むエコスファクトリー、グリーンループ株式をヴェオリア・ジャパンへ3,700百万円で売却したことによるものである。
また、H28.11期において持分法適用関連会社である福海風力發電股份有限公司への出資金について544百万円の減損を行い、富士見ソーラー匿名組合事業について同社に対する売掛金債権に対し141百万円の減損を実施した。


【キャッシュフロー】


(営業キャッシュフロー)

H27.5期の営業CFは288百万円と簡易営業CF1,263百万円と比較して低めであった。
キャッシュインを生じない持分法利益238百万円、売上債権の増加704百万円があったことが要因である。

H28.5期の営業CFは3,935百万円と簡易営業CF2,276百万円よりも大きくなった。
現金支出が生じない固定資産圧縮損363百万円、未払法人税の増加469百万円等によるものである。

H28.11期は営業キャッシュインとならない子会社株式売却益のマイナス調整2,350百万円の影響が大きい。


(投資キャッシュフロー)

H27.5期、H28.5期は積極的な設備投資時期であった。
H27.5期の投資CF▲7,813百万円のうち、固定資産取得支出が5,660百万円、投資有価証券取得取得支出1,335百万円が主なものである。

H28.5期の投資CF▲8,405百万円のうち、固定資産取得支出が6,920百万円、投資有価証券取得支出が812百万円であった。


一方、H28.11期では設備投資は一段落している。
有形固定資産取得支出は356百万円、投資有価証券取得支出は33百万円に過ぎなかった。
また、当期はプラスチックリサイクル事業の売却により子会社株式売却による収入が2,525百万円計上されている。



(財務キャッシュフロー)  

H27.5期、H28.5期は積極的な設備投資によりフリーキャッシュフローは大幅なマイナスとなっている。
これをカバーするために財務CFは大幅プラスであり長期借入、ノンリコース借入による収入が多額となった。

H28.11期は事業売却もありフリーキャッシュフローがプラスとなり借入金の返済を進めている。




【財政状態】
 

(財務諸表の特徴)

設備産業であり固定資産(等に機械装置)の割合が非常に大きい。設備産業であることかrROAは2%以下と低かった。(H28.11期は多額の事業売却益があるためROAは9%と例外的に高い)
また、レバレッジを効かせており自己資本比率が10%台と低く、有利子負債比率は500%を超える高水準である。
反面、ROEはレバレッジが効いているため高水準である。


(流動資産・負債)

流動比率は200%近くあり短期資金繰りに問題はない。
ネットキャッシュを除いた純流動資産はプラスであり直近のH28.11期は974百万円である。
売上債権が多額である反面、仕入債務の計上がほとんどないためである。
売上債権の回転期間が比較的長い点も特徴的である。s


(固定資産)

直近決算期であるH28.11期における固定資産総額33十億円のうち、機械装置運搬具(発電設備と考えられる)が25十億円と75%と大部分を占める。

償却期間は8年の定額法であり、実際の利用期間の長短が将来損益及び将来キャッシュフローに大きな影響を与えることになる。

関係会社株式はH27.5期で1,354百万円、H28.5期で846百万円、H28.11期で524百万円と減少傾向にある。


(固定負債)

大部分がノンリコース長期借入金である。

その他、資産除去債務、特別修繕引当金が計上されている。



(自己資本、有利子負債) 

直近のH28.11期の純資産が6,999百万円に対し有利子負債は34,966であり有利子負債比率は500%と借入割合は大きくなっている。

しかし、ネット有利子負債がH28.11期で34十億円とH28.5期と比べて6十億円減少し、純資産は1,865百万円増加していることから自己資本比率、有利子負債比率は改善傾向にある。


(IPO調達資金が自己資本へ与える影響)

IPOによる増資による自己資本増加は504百万円であり、直近純資産6,999百万円に対する影響は7%程度と大きくない。


【株価】


(将来見込み)

安定した売電収入はFIT制度により20年と予想されるため超長期的な見込みは不透明である。
しかし、高単価なFIT制度残存期間はまだ残っており、今後事業化される案件(軽米西ソーラー128MWなど)もあるためここ数年の短期間では上ぶれも予想される。
しかし、H28.11期において設備投資が過去2期と比べて一段落している点は留意すべきである。



(PER指標)

直近決算期であるH28.11期の利益を単純年換算した利益と想定発行価格を前提としたPER(希薄化株式考慮済)は2.0倍であるが、事業売却益23億円を計上した影響が含まれているためPER指標は採用できない。


(PBR指標)

直近決算期であるH28.11期の純資産と想定発行価格による増資を前提としたPBRは2.0倍である。
直近の利益捻出力を考慮すると割安であるが、FIT制度に基づく超長期的な将来性を加味することも考えられる。


(EBIT倍率、EBITDA倍率)

特別損益の影響を排除できるため、EBIT倍率、EBITDA倍率にる株価(想定発行価格)判定が望ましいと考えられるが、H28..11期のEBIT倍率は7.3倍、EBIT倍率は5.0倍とこちらの指標でも割安感はある。



市場別、業種別PER、PBRの一覧はこちら。



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レノバ(9519)

(単位:千円) H27.5 H28.5 増減 H28.11 進捗/増減
売上高 5,539,928 8,556,254 3,016,326 5,628,124 66%
年間予想 11,256,248 50%
売上総利益 1,827,093 3,718,266 1,891,173 3,290,122 88%
販管費 1,234,248 1,612,767 378,519 831,355 52%
営業利益 592,845 2,105,499 1,512,654 2,458,767 117%
年間予想 4,917,534 50%
減価償却費 830,296 1,970,656 1,140,360 1,161,206 59%
 EBITDA 1,423,141 4,076,155 2,653,014 3,619,973 89%
支配株主帰属利益 433,568 305,678 △127,890 2,223,939 728%
年間予想 4,447,878 50%
※年間予想はQ数値を年次に単純換算した金額
H27.5 H28.5 H28.11 予想
売上総利益率 33.0% 43.5% 58.5%
営業利益率 10.7% 24.6% 43.7% 43.7%
支配株主帰属利益率 7.8% 3.6% 39.5% 39.5%
最終利益÷営業利益 73.1% 14.5% 90.4% 39.5%
レノバ(9519)のセグメント情報
売上(千円) H27.5 H28.5 増減 H28.11 進捗/増減
再エネ発電事業 547,417 3,831,919 3,284,502 3,334,842 87%
再エネ開発運営事業 1,238,135 2,147,289 909,154 2,333,616 109%
プラスチックリサイクル 4,216,752 3,575,364 △641,388 1,140,150 32%
営業利益(千円) H27.5 H28.5 増減 H28.11 進捗/増減
再エネ発電事業 653,107 3,358,138 2,705,031 2,868,719 85%
再エネ開発運営事業 366,575 1,620,372 1,253,797 1,741,235 107%
プラスチックリサイクル 1,008,673 854,887 △153,786 246,147 29%
セグメント資産(千円) H27.5 H28.5 増減 H28.11 進捗/増減
再エネ発電事業 18,643,802 38,523,706 19,879,904
再エネ開発運営事業 7,805,100 11,988,101 4,183,001
プラスチックリサイクル 2,927,538 2,805,115 △122,423
レノバ(9519)のキャッシュフロー
H27.5 H28.5 増減 H28.11 増減
営業CF 288,964 3,935,625 3,646,661 2,536,361 64%
投資CF △7,813,169 △8,405,732 △592,563 2,093,261 -25%
 フリーCF △7,524,205 △4,470,107 3,054,098 4,629,622 -104%
財務CF 6,926,138 8,225,624 1,299,486 △3,193,237 -39%
※簡易営業CF 1,263,864 2,276,334 3,385,145
レノバ(9519)の財政状態
H27.5 H28.5 増減 H28.11 増減
現預金等 4,642,756 10,468,581 5,825,825 11,280,580 811,999
流動資産 7,457,465 14,516,367 7,058,902 15,185,252 668,885
流動負債 4,661,280 7,760,450 3,099,170 6,785,323 △975,127
 流動資産ー流動負債 2,796,185 6,755,917 3,959,732 8,399,929 1,644,012
 うち現金短借以外 1,697,231 2,222,773 525,542 974,503 △1,248,270
有利子負債(流動) 3,543,802 5,935,437 2,391,635 3,855,154 △2,080,283
有利子負債(固定) 18,698,626 34,606,740 15,908,114 31,111,019 △3,495,721
 有利子負債計 22,242,428 40,542,177 18,299,749 34,966,173 △5,576,004
ネット有利子負債 17,599,672 30,073,596 12,473,924 23,685,593 △6,388,003
固定資産 20,511,534 37,096,916 16,585,382 33,871,539 △3,225,377
固定負債 19,810,296 38,717,982 18,907,686 35,271,767 △3,446,215
純資産 3,497,423 5,134,851 1,637,428 6,999,701 1,864,850
非支配株主持分 817,941 1,157,652 339,711 790,923 △366,729
親会社所有者持分 2,679,482 3,977,199 1,297,717 6,208,778 2,231,579
流動比率 160% 187% 224%
固定長期適合率 88% 85% 80%
自己資本比率 13% 10% 14%
有利子負債比率 636% 790% 500%
レノバ(9519)の利益指標
H27.5 H28.5 H28.11 予想
ROE 16.2% 7.7% 66.3% 66.3%
ROA 1.6% 0.6% 9.0% 9.0%
レノバ(9519)の株式数,時価総額の見込み
上場前発行済株式 17,551,600 自己株式除く
上場時発行済株式 831,500
引受価額 607.2
上場時調達見込額 504,887 千円
調達後親会社所有者持分 6,713,665
直近株価 660 想定発行価格
時価総額 12,132,846
非支配株主持分 790,923
純有利子負債 23,180,706
事業価値 36,104,475
潜在株 1,682,000 潜在株割合 9.1%
レノバ(9519)の株価指標
指標 H27.5 H28.5 H28.11 予想
EBIT倍率 60.9 17.1 7.3 7.3
EBITDA倍率 25.4 8.9 5.0
営業利益PER 22.3 6.3 2.7 2.7
PER 30.5 43.3 3.0 3.0
PBR NA NA 2.0
レノバ(9519)の株主構成
政府 0%
金融機関 3%
金融商品取引業者 2%
その他法人 30%
外国法人等 0%
個人 65%
*木南陽介(社長)19%、住友林業10%
レノバ(9519)における従業員の状況
H28/12
連結人員 70
親会社単体人員 65
親会社単体平均年齢 41
親会社単体平均年収 9,685 千円