IPO予定のシャノン(3976)の財務分析と初値予想

2016/12/27

IPO

【事業】

設立:2000年8月
本社所在地:東京都港区三田
事業内容:マーケティングクラウドサービスの企画・開発・販売・導入、マーケティングに関わるコンサルティング及びサービス
業種分類:情報通信 
決算:10月
上場市場:マザーズ
監査人:トーマツ
主幹事証券:東洋証券
社長:中村健一郎昭和52年生まれ


(事業内容)

統合型マーケティン支援サービス『シャノンマーケティングプラットフォーム』の開発・販売及び関連するマーケティングコンサルティングサービスを提供。

連結子会社である想能信息科技(上海)有限公司にて、『シャノンマーケティングプラットフォーム』の開発の一部を実施。

「マーケティングプラットフォーム事業」の単一セグメントであるが、「マーケティングオートメーション」、「イベントマーケティング」の2つのサービスがある。


①マーケティングオートメーション

BtoB企業に対して、『シャノンマーケティングプラットフォーム』のクラウドでの提供を軸マーケティング業務の効率化・自動化等の支援、マーケティング戦略の立案・支援、メール・Webサイト等のマーケティングコンテンツの作成、効果分析、運用代行等のコンサルティングサービスを実施。

収入源は『シャノンマーケティングプラットフォーム』の料金プランに基づく月額基本料金、オプション料、導入時および既存利用顧客へのコンサルティング・設計・作業費用、BPOサービス料、

契約アカウント数は

25.5期 221
26.10期 280
27.10期 288
28.7期 289


②イベントマーケティング

イベントや展示会、企業によるプライベートショーにおいて、『シャノンマーケティングプラットフォーム』を使った申込受付管理やバーコード・QRコード来場者認証、アフターフォローのメール運用等をワンストップで効率的に実現するクラウドサービスの提供。
iPadでのアンケート、イベント用モバイルアプリ等、各種デジタルデバイスを活用したイベント・展示会等の開催・運営支援を実施。

対象顧客は、展示会主催者、中・大規模のプライベートショーを主催する企業、プライベートショー・イベント・展示会のプロデュースを行う広告代理店。


(関係会社)

想能信息科技(上海)有限公司/中国上海/ソフトゥエア開発/100%保有


(上場時調達資金使途)

IPO実施時の増資に伴い調達する資金約2億円は、シャノンマーケティングプラットフォームの機能改良、新機能の追加のために必要な開発人員の人件費として160,752千円、残額を事業拡大に向けた人材採用費用として使用見込み。



詳細な数値分析はこちら。


【損益】


(売上・売上総利益)

H26.10期は17ヶ月決算であるため参考程度ではあるが、H28.10期の売上は前期比9%増の1,534百万円であった。
3Qまでの情報であるが、イベントマーケティングが好調でる。

粗利率について大きな変動はないが、H28.10期は前年よりも若干良化し57.1%であった。

H28.10期の売上総利益は売上の増加および粗利率の改善により828百万円と前期比10%の増加となった。


(販管費)

H28.10期の販管費は前期比9%増の828百万円であった。
主な内訳は給与338百万円、賞与引当繰入22百万円である。

(営業損益)

H28.10期は人件費の増加による販管費の増加はあったものの、売上総利益の増加が上回ったため、営業利益は前期比41%増の46百万円であった。



(最終利益)
 
H28.10期は営業外損益として支払利息6百万円、為替差損2百万円、助成金収入3百万円以外には大きなものはない。

「最終利益÷営業利益」も79%と正常の範囲内である。

なお、税効果について評価性引当額は少額計上しているのみであり大部分の一時差異は回収可能とされている。H28.10期で評価性引当額の取り崩しがあっているため税負担率が若干低くなっている。


【キャッシュフロー】


(営業キャッシュフロー)

簡易営業CFとの相違については、売上債権の増減が大きく、各期の営業CFのブレを大きくしている。


(投資キャッシュフロー)

無形固定資産(自社利用ソフトウェア)に積極投資しておりH26.10期、H27.10期、H28.10 期にそれぞれ170百万円、150百万円、152百万円を投資している。

なお、自社利用ソフトウェアの償却年数は3-5年である。


(財務キャッシュフロー)  

借入、社債の増減以外でおおきな増減としては、H28.10期に新株予約権の権利行使による株式発行70百万円がある。


【財政状態】
 

(財務諸表の特徴)

総資産のうち無形固定資産(自社利用ソフトゥエア)の割合が高い。
また、自己資本比率、負債比率は改善しつつある。


(流動資産・負債)

直近のH28.10期において流動資産のうち現預金137百万円を除くと大部分は売上債権であり241百万円ある。
また、流動負債393百万円のうち借入債務185百万円以外では仕入債務53百万円、未払金38百万円がある。
流動比率は115%であり短期的な資金繰りに問題はない。


(固定資産)

直近のH28.10期において固定資産589百万円のうち無形固定資産が391百万円を占める。
ソフトウェア279百万円、ソフトウェア仮勘定が111百万円あり。


(固定負債)

全て有利子負債である。H28.10期に社債100百万円は返済されて、長期借入金のみとなった。


(自己資本、有利子負債) 

H27.10期、H28.10期は利益計上による自己資本増強もあったが、H28.10期は新株予約権公使による増資もあり自己資本学は急増している。

一方、ネット有利子負債は毎期20百万円程度ずつ減少している。



(IPO調達資金が自己資本へ与える影響)

想定発行価格1,400円を前提としたIPOにより222百万円の自己資本の増加が見込めるが、直近BSにおける純資産が443百万円であることを考慮すると純資産に与える影響は大きなものになると考えられる。


【株価】


(将来見込み)

『シャノンマーケティングプラットフォーム』の契約アカウント数はH26.10以降に増加していないが、売上の増加はあるため顧客単価は増加していると考えられる。
利益率の改善もすすんでおり、今後アカウント数の増加があれば売上も急拡大する可能瀬はある。


(PER指標)

直近決算期であるH28.10期の利益と想定発行価格を前提としたPER(希薄化株式考慮済)は53.9倍である。


(PBR指標)

直近決算期であるH28.10期の純資産と想定発行価格による増資を前提としたPBRは3.0倍である。


(その他)

想定発行価格による増資とH28.10期の営業利益に基づいたEBIT倍率は42.3倍、EBITDA倍率は13.1倍である。利益に対する減価償却費の割合が大きいためEBITDA倍率はEBIT倍率に比較して低くなっている。


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シャノン(3976)

(単位:千円) H26.10 H27.10 増減 H28.10 進捗/増減
売上高 1,814,690 1,411,473 △403,217 1,534,160 109%
年間予想 1,534,160 100%
売上総利益 979,618 795,017 △184,601 875,288 110%
販管費 1,026,694 762,205 △264,489 828,877 109%
営業利益 △47,076 32,812 79,888 46,411 141%
年間予想 46,411 100%
減価償却費 133,326 86,493 △46,833 103,582 120%
 EBITDA 86,250 119,305 33,055 149,993 126%
支配株主帰属利益 △65,132 24,282 89,414 36,832 152%
年間予想 36,832 100%
※年間予想はQ数値を年次に単純換算した金額
H26.10 H27.10 H28.10 予想
売上総利益率 54.0% 56.3% 57.1%
営業利益率 -2.6% 2.3% 3.0% 3.0%
支配株主帰属利益率 -3.6% 1.7% 2.4% 2.4%
最終利益÷営業利益 138.4% 74.0% 79.4% 2.4%
シャノン(3976)のセグメント情報
売上(千円) H26.10 H27.10 増減 H28.7(3Q) 進捗/増減
マーケティングオートメーション 1,005,330 1,005,330 785,439 78%
イベントマーケティング 368,526 368,526 333,485 90%
その他 37,616 37,616 0 0%
売上(千円) H26.10 H27.10 増減 H28.7(3Q) 進捗/増減
富国生命 235,900 196,287 △39,613 109,961 56%
シャノン(3976)のキャッシュフロー
H26.10 H27.10 増減 H28.10 増減
営業CF 38,296 207,750 169,454 90,409 44%
投資CF △192,135 △190,180 1,955 △239,698 126%
 フリーCF △153,839 17,570 171,409 △149,289 -850%
財務CF 188,166 7,672 △180,494 145,243 1893%
※簡易営業CF 68,194 110,775 140,414
シャノン(3976)の財政状態
H26.10 H27.10 増減 H28.10 増減
現預金等 120,118 145,884 25,766 137,359 △8,525
流動資産 441,936 457,573 15,637 453,866 △3,707
流動負債 298,585 384,185 85,600 393,328 9,143
 流動資産ー流動負債 143,351 73,388 △69,963 60,538 △12,850
 うち現金短借以外 166,775 98,688 △68,087 108,475 9,787
有利子負債(流動) 143,542 171,184 27,642 185,296 14,112
有利子負債(固定) 265,846 245,876 △19,970 206,057 △39,819
 有利子負債計 409,388 417,060 7,672 391,353 △25,707
ネット有利子負債 289,270 271,176 △18,094 253,994 △17,182
固定資産 336,603 411,462 74,859 589,238 177,776
固定負債 265,846 245,876 △19,970 206,057 △39,819
純資産 214,108 238,974 24,866 443,719 204,745
非支配株主持分 0 0 0 0 0
親会社所有者持分 214,108 238,974 24,866 443,719 204,745
流動比率 148% 119% 115%
固定長期適合率 70% 85% 91%
自己資本比率 28% 27% 43%
有利子負債比率 191% 175% 88%
シャノン(3976)の利益指標
H26.10 H27.10 H28.10 予想
ROE -30.4% 10.2% 5.5% 5.5%
ROA -8.4% 2.8% 2.9% 2.9%
シャノン(3976)の株式数,時価総額の見込み
上場前発行済株式 1,206,350 自己株式除く
上場時発行済株式 172,500
引受価額 1,288.0
上場時調達見込額 222,180 千円
調達後親会社所有者持分 665,899
直近株価 1,400 想定発行価格
時価総額 1,930,390
非支配株主持分 0
純有利子負債 31,814
事業価値 1,962,204
潜在株 39,650 潜在株割合 2.9%
シャノン(3976)の株価指標
指標 H26.10 H27.10 H28.10 予想
EBIT倍率 △41.7 59.8 42.3 42.3
EBITDA倍率 22.8 16.4 13.1
営業利益PER △42.2 60.5 42.8 42.8
PER △30.5 81.8 53.9 53.9
PBR NA NA 3.0
シャノン(3976)の株主構成
政府 0%
金融機関 3%
金融商品取引業者 28%
その他法人 8%
外国法人等 4%
個人 57%
*中村健一郎(社長)27%、永島毅一郎(副社長)13%
シャノン(3976)における従業員の状況
H28.11
連結人員 124
親会社単体人員 119
親会社単体平均年齢 34.9
親会社単体平均年収 4,718 千円
※セグメントは「マーケティングプラットフォーム事業」のみ。