IPO予定のFringe81(6550)の財務分析と初値予想

2017/05/23

IPO

想定発行価格の印象:【高め】

【事業】

設立:2012年11月
本社所在地:東京都港区六本木六丁目10番1号六本木ヒルズ森タワー8F
事業内容: インターネット広告配信プラットフォーム(アドネットワーク)等のサービス開発から広告主のマーケティング支援サービスの提供、ならびにHRテック領域等におけるウェブサービスの提供等
業種分類:サービス業
決算:3月
上場市場:マザーズ
監査人:新日本
主幹事証券:野村證券
社長:田中弦、昭和51年生まれ、ソフトバンク、ネットイヤーグループ等を経て平成17年旧当社設立


【過去の業績推移】


平成24年11月に、当社の実質的な存続会社である旧Fringe81株式会社の経営陣によるMBOの受け皿会社として、Fringe81ホールディングス株式会社の商号で設立された。

新会社の売上高は設立初年度であるH25.3期は売上がなかったが、H28.3期(第4期)は売上が45億円まで急拡大している。

経常利益は設立以降、第4期(H28.3期)までは継続して数千万円の赤字である。

最終利益も同様に赤字が継続している。


総資産は第一期末が245百万円だったのに対し第四期末では1,622百万円まで拡大した。

毎期赤字であったが、増資により債務超過とはなっておらず、H28.3期末の純資産は546百万円である。

従業員数は4年間で0人から70人まで拡大した。


【実施する事業】



①広告代理サービス(28.3期売上4,074百万円)
主にインターネット広告の販売を実施。
Googleディスプレイネットワーク、Yahoo!ディスプレイアドネットワーク、Facebook広告、各種DSPサービス/アドネットワークの運営者から広告枠を買い付け、広告主及び広告代理店に一定のマージンを付加して販売。
強みは自社開発のアドテクノロジーのソリューションを併せて提供できることと、ア
トリビューション分析等各種分析・コンサルティングが実施できることにある。


②メディアグロースサービス(28.3期売上288百万円)
アドネットワークの運営、及びインターネットメディアの広告事業収益化にかかる業務支援を実施。
主にアプリを含むスマートフォンメディアに対して広告商品企画・開発・オペレーションを提供する事業である。


③ソリューションサービス(28.3期売上155百万円)
主にインターネット広告を配信される広告主向けに、広告戦略の意思決定のサポートとなる分析や、広告運用の工数を削減できるソリューションとなるプロダクトを提供する。


④ウェブサービス(28.3期売上0百万円)
相互評価・賞賛のためのサービス「Unipos」及びスマートフォンアプリ「シンクル」を提供。



【損益(直近)】


(売上、売上総利益)

直近3期間ではH28.3期は前期比87%の売上増加となったが、H29.3期は前期比4%の売上の伸びに留まっている。

売上高のうちエンジャパン向けの割合が大きい。H29.3期の売上47億円のうち23億円はエンジャパン向けである。

売上原価の約9割は媒体費でありyahoo、google、facebookへの支払であると考えられる。

粗利率は2割前後で推移しているが、H29.3期の粗利率が23.6%と高かったため粗利額は1,022百万円となった。


(販管費、営業損益)

直近3期間において販管費は人員の増加等により毎期大幅な増額となっている。

直近のH29.3期の販管費1,116百万円のうち、259百万円は給与手当、122百万円は雑給、119百万円は地代家賃、106百万円は研究開発費である。

(最終利益)

H29.3期に初めて黒字化しており、「最終利益÷営業利益」比率は90%と高い。

H29.3期に初めて繰延税金資産14百万円を計上したため税金費用割合が低くなったことが要因である。


【財政状態】
 

(財務諸表の特徴)

H28.3期までは毎期赤字を積み上げてきたため、増資を行なっても自己資本比率は33%、有利子負債比率は65%と財務内容は安定しているとは言えない。



(ROAとROE)

直近決算期であるH29.3期の純資産と想定発行価格による増資と直近決算期の利益を前提としたROA、ROEはそれぞれ3.8%、9.3%である。

自己資本比率の低さを加味すると総資産、純資産に比べて利益水準はまだ低めであるといわざるを得ない。



(IPO調達資金が自己資本へ与える影響)

想定発行価格と公募株式数に基づく調達資金は281百万円であり、直近純資産に対して45%の自己資本増加となる。
現時点での自己資本の充実度が低いため比較的高めの印象がある。



【株価】


(将来見込み)

H29.3期は黒字化しているものの、売上高の伸びは鈍化しておりエンジャパンへの依存度も高いところは気にかかる。
広告代理サービス以外のサービスの拡大が望まれる。


(PER指標)

直近決算期であるH29.3期の利益と想定発行価格を前提としたPER(希薄化株式考慮済)は64.9倍である。
高めの水準であるため将来性を加味した株価である。


(PBR指標)

直近決算期である29.3期の純資産と想定発行価格による増資を前提としたPBRは6.0倍である。
ROEは10%未満であるため、高めの印象である。


(その他)

想定発行価格による増資とH29.3期の営業利益に基づいたEBIT倍率は52.5倍であり、EBITDA倍率は24.3倍である。


 

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Fringe81(6550)
(単位:千円) H27.3 H28.3 増減 H29.3 進捗/増減
売上高 2,413,954 4,519,528 2,105,574 4,721,867 104%
年間予想 4,721,867 100%
売上総利益 487,671 805,684 318,013 1,116,371 139%
販管費 552,149 856,384 304,235 1,022,859 119%
営業利益 △64,478 △50,700 13,778 93,512 -184%
年間予想 93,512 100%
減価償却費 77,641 78,323 682 108,645 139%
 EBITDA 13,163 27,623 14,460 202,157 732%
支配株主帰属利益 △100,181 △55,219 44,962 84,465 -153%
年間予想 84,465 100%
簡易営業キャッシュフロー △22,540 23,104 45,644 193,110
年間予想 193,110
※年間予想はQ数値を年次に単純換算した金額
H27.3 H28.3 H29.3 予想
売上総利益率 20.2% 17.8% 23.6%
営業利益率 -2.7% -1.1% 2.0% 2.0%
支配株主帰属利益率 -4.2% -1.2% 1.8% 1.8%
最終利益÷営業利益 155.4% 108.9% 90.3% 90.3%
Fringe81(6550)の財政状態
H29.3
現預金等 275,119
流動資産 1,286,597
流動負債 1,163,492
 流動資産ー流動負債 123,105
 うち現金短借以外 137,998
有利子負債(流動) 290,012
有利子負債(固定) 119,964
 有利子負債計 409,976
ネット有利子負債 134,857
固定資産 628,106
固定負債 119,964
純資産 631,247
非支配株主持分 0
親会社所有者持分 631,247
流動比率 111%
固定長期適合率 84%
自己資本比率 33%
有利子負債比率 65%
Fringe81(6550)の利益指標
H29.3 予想
ROE 9.3% 9.3%
ROA 3.8% 3.8%
Fringe81(6550)の株式数,時価総額の見込み
上場前発行済株式 2,295,500 自己株式除く
うち売出株数 151,300 当選枚数
上場時発行株式 147,800 オーバーアロットメント含 2,991
引受価額 1,904.4
上場時調達見込額 281,470 千円
調達後親会社所有者持分 912,717
上場時増資額/直近純資産 45%
直近株価 2,070 想定発行価格
時価総額 5,057,631 千円
非支配株主持分 0
純有利子負債 △146,613
事業価値 4,911,018
潜在株 204,500 潜在株割合 8.4%
Fringe81(6550)の株価指標
指標 H29.3 予想
EBIT倍率 52.5 52.5
EBITDA倍率 24.3
営業利益PER 58.6 58.6
PER 64.9 64.9
PBR 6.0
Fringe81(6550)における従業員の状況
H29.4
連結人員 88
親会社単体人員 88
親会社単体平均年齢 29.6
親会社単体平均年収 5,125 千円
一人あたり年間粗利(連結) 12,686 千円
一人あたり年間販管費(連結) 11,623 千円