NTTドコモ(9437)、ソフトバンクグループ(9984)、KDDI(9433)の財務内容、株価の比較

2016/08/11

企業分析

 7/29にNTTドコモ(9437)の第1Q決算発表があった。

 前年同期比で売上高は3.0%増加して1,108十億円となった。営業利益は27%増加して299十億円、最終利益は22%増加し206十億円となった。
 売上は増加したにもかかわらず、減価償却費が36十億円削減されたため大幅な増益となった。減価償却費の減少は減価償却方法を定率法から定額法へ変更したことによるもの。

 NTTドコモのセグメントは「通信事業」(携帯電話、光ブロードバンドサービスなど)、「スマートライフ事業」(動画音楽配信等のDマーケット、金融決済サービスなど)、「その他事業」(携帯補償、システム開発保守など)の3つに区分される。なお、「通信事業」が全セグメント利益の9割を占める。

 第1Qはすべてのセグメントで前年同期比で売上増加、セグメント利益の増加となった。

 「通信事業」では携帯端末の売上は36十億円減少したものの、ドコモ光の拡大、パケット利用の増大、2台目需要の拡大により増収となった。
 携帯電話サービス契約数は前年同期比で6.0%増加した。

 営業外損益区分で特記すべき項目はない。


 7/28にソフトバンクグループ(9984)の第1Q決算発表があった。

 前年同期比で売上高は前期比60十億円増加(+2.9%)し2,126十億円となった。また、営業利益はほぼ横ばいで319十億円であり、親会社帰属利益は19%増加し254十億円となった。

 ソフトバンクは事業セグメントとして国内通信事業の他、スプリント事業、ヤフー事業、流通事業、その他を保有している。
調整前セグメント損益では、その他(ソフトバンクホークス事業)以外はプラスとなったが、セグメント合計営業利益のうち70%は国内通信事業で獲得している。

 国内通信事業は前年同期比で売上高が39十億円増加し、営業利益も24十億円増加した。光回線サービス「SoftBank 光」の順調な拡大に伴い、ブロードバンドサービスの売上が22十億円増加したことが大きい。なお移動通信サービス契約数は前期末と比べてほぼ横ばいであった(Ymobileが好調)。

 また、流通事業の営業利益が前年同期比で6.2十億円増加した。スマートフォンの販売数が増加したことに加え、ソフトバンクコマース&サービス㈱における携帯端末アクセサリー事業が好調に推移したためである。

 一方、スプリント事業の営業利益は前年同期比でマイナス24十億円の45十億円と落ち込んだ。「トランスフォーメーション」によるコスト削減はあったものの契約数が4四半期連続で減少し円高の影響もあったためである。ちなみにスプリント事業においては償却費(のれん、有形資産)が大きくEBITDA(償却前営業利益)では271十億円あり国内通信事業のEBITDAと大きく変わらない。


 営業外の損益項目としてはアリババ株売却による関係会社株式売却益204十億円、ガンホー株減損42十億円、インドの優先株関連損失30十億円などによるその他営業外損益としてマイナス90十億円、スーパーセル利益及び税金資産認識による非継続事業からの純利益が60十億円ある。


 また、8/2にKDDI(9433)が第1Q決算を公表した。

 前年同期比で売上高は8.0%増加の1,130十億円、営業利益は19.1%増の275十億円、最終利益は16.1%増加の167十億円と増収増益となった。

 セグメントは「パーソナル」(auブランド(携帯・光))、「バリュー」(コンテンツ、決済、コマース等)、「ビジネス」(法人向けクラウドサービス等)、「グローバル」の4つで区分される。
全セグメント利益のうち8割を「パーソナル」区分が占めている。

 「グローバル」区分では減収減益となったが、その他の3つの区分では増収増益となった。

 「パーソナル」区分では前年同期比で売上高が6.6%増の868十億円、営業利益が23.1%増の220十億円と大幅な増収増益となった。
第1四半期でau契約は221千台の純増で38,457千契約となった。スマートフォンの増加にタブレット等の契約も増加したことによる。



以下で3社の財務内容を比較する。
項目
NTTドコモ(9437)
ソフトバンクグループ(9984)
KDDI(9433)
売上規模

4,620十億円(予想)
9,153十億円(実績)
4,700十億円(予想)
営業利益(年実績)

783十億円
999十億円
833十億円
営業利益(年予想)

910十億円
未定
885十億円
当期利益(年予想)

640十億円
未定
540十億円
株主資本、持分(直近Q)

5,302十億円
2,414十億円
3,341十億円
株主資本比率

76.5
11.7
57.2
時価総額(8/9現在)

10,524十億円
7,428十億円
8,511十億円
PBR


1.9
2.9
2.4
PER
15.5
11.6
14.9

























 売上規模はソフトバンクが他の2社よりも倍近く非常に大きくなっている。
 これは国内通信事業のほか、スプリント事業、ヤフー事業、流通事業等の事業を実施しており多角化しているためである。
 1Qの売上に占める国内通信事業の割合は35%であり、売上金額は754十億円である。

 財務安定性の観点からは株主資本比率が76%と最も高いドコモに優位性がある。一方、ソフトバンクの株主資本比率は12%と低い。ソフトバンクの自己資本については「非支配株主持分」が26%と高い点も特徴的である。ソフトバンクの連結子会社にはソフトバンクグループ以外の会社から出資を受けている割合が他の2社よりも高いということである。

 保有資産負債では、ソフトバンクが有形固定資産3,907十億円、のれん無形資産7,334十億円と大きく、有利子負債も12,371十億円と多額になっている。
 KDDIは有形固定資産2,441十億円、のれん無形資産1,290十億円、有利子負債が1,047千円とソフトバンクより少額である。
 ドコモは有形固定資産2,427十億円、無形固定資産・営業権が858十億円、有利子負債が222十億円と無形固定資産・営業権、有利子負債ともに3社の中で最も少額である。

 株価は1年前と比較してドコモが5%下落、ソフトバンクが18%下落、KDDIが3%下落とKDDIが最も堅調であった。
 日経平均株価が1年間で20%下落していることと比較すると比較的堅調な業界である。