新規上場のバリューデザイン(3960)の財務、株価分析 

2016/09/23

IPO 企業分析

【事業】

 バリューデザインの事業は、サーバー管理型プリペイドカードシステム「バリューカードASPサービス」を利用した「ハウスプリペイドカード事業」及び「ブランドプリペイドカード事業」を実施。
 導入企業からASP利用料金を受け取るビジネスである。

 ハウスプリペイドカード導入店舗はh26.6月12,158店⇒H28.6月48,239店と増加している。

 ブランドプリペイドカードはVISA、MasterCardを始めとする国際ブランドと提携し、ハウスプリペイドカードの機能にVISA、MasterCard等の国際ブランド加盟店での決済機能を搭載したカードのことである。

 ブランドプリペイドカード事業のカード発行枚数はh26.6月6,019千枚⇒h28.6月7,749千枚と増加傾向にある。
 しかし、H25.7から開始したブランドプリペイドカード事業について、ブランドプリペイドシステム開発投資のうち413,946千円を減損処理した。


 なお、H27.6期におけるセグメント別業績は以下の通りである。
 
 ハウスプリペイドカード事業は売上1,069百万円万円、セグメント利益167百万円。
 ブランドプリペイドカードは売上174百万円、セグメント利益▲149百万円。

 販売代理店である大日本印刷株式会社とは包括的な業務提携を行なっており、当社グループの総議決権の12.0%を所有、また売上の26%を占める。

 上場時点におけるVC保有率は17.5%。投資事業組合が10.7%あり。

 大株主ロックアップは90日と180日。

 従業員数は連結50人、提出会社46人、平均年齢38.76歳、平均年収5,914千円。



【損益】

 バリューデザインのH27.6期は大幅な売上増(前年比20%増)となったものの、売上原価、販管費の負担が売上増加以上に出てしまい、売上総利益、営業利益はともに減益となった。特に営業利益はマイナス176百万円と大幅な赤字となった。

 H27.6期は大幅な赤字となったため、減損損失413百万円も計上されたため最終利益は550百万円の赤字となった。

 H28.6期は前期の減損処理のおかげで負担すべき経費(特に減価償却費)が少なくなったため売上原価負担が大幅に軽減され、また、売上も好調(前年比+30%)であり、大幅な増収、増益となった。
  


【キャッシュフロー】

 バリューデザインのH27.6期においては上記の通り営業赤字となったが、営業CFにおいても▲670千円となった。営業赤字にも関わらず、売上は増加したため売上債権が146百万円増加したためである。

 有形固定資産、無形固定資産への設備投資はH26.6期、H27.6期ともに積極的に継続したため、営業CFがマイナスだったH27.6期はフリーキャッシュフローは▲72百万円に落ち込んだ。
  
 H26.6期の財務CFは+272百万円と大幅なプラスとなっている。セールアンドリースバック収入が73百万円、新株発行が269百万円あったためである。H27.6期も新株発行を105百万円実施したものの借入金、リース債務、割賦債務の返済が多くあり財務CF合計では▲78百万円となった。

 直近期のH28.6期においては営業CFは+182百万円とプラ転となった。また、投資CFは85百万円とほぼ減価償却費と同額となっており前期の減損によりバランスは良くなった。



【財政状態】
 
 バリューデザインの貸借対照表項目のうち、流動資産についてはH26.6期からH27.6期にかけて売上債権が146百万円増加し300百万円となった。また、H28.3期の売上債権残高は307百万円となり前期末と比べてほぼ横ばいとなった。

 バリューデザインの固定資産の特徴として、無形固定資産である「ソフトウェア」が占める割合が大きいことがあるがH27.6期は前期556百万円から143百万円と大幅に減少した。ブランドプリペイドシステム開発投資の減損を実施したことによるものである。

 H28.6期のソフトウェア残高は150百万円であり横ばいとなったが、依然として固定資産のうちソフトウェアが占める割合は47%と高い。

 H28.6期は有形固定資産の建設仮勘定が57百万円計上されたこと等により固定資産残高は増加した。

 H28.6期に固定負債の大部分を占めるものは長期借入金である。リース債務残高は流動、固定共に減少傾向にあるが、長期借入金は増加傾向にある。

 H27.6期は大規模な減損を行なった結果、純資産は134百万円まで毀損したが、H28.6期の利益計上により288百万円まで回復した。
  


【株価】

 直近のH28.3期において大幅な利益改善となった要因は売上の増加はあるものの、H27.6期に実施した大規模な減損によるところも大きいと考えられる。

 今後、必要となる設備投資に見合った売上を確保できるかがポイントとなるが、ブランドプリペイドカード事業において初期設備投資以外に今後は大きな設備投資がかからないとすれば、今後の将来性も含めて適正株価を考慮してもいいかもしれない。

 将来の増収増益を含んで、PER30倍を前提とすると初値は2,800円までいくかも知れない。
 

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バリューデザイン(3960) 業績推移
(単位:千円) H26.6 H27.6 増減 H28.6 増減
売上高 1,031,892 1,243,663 211,771 1,631,170 131%
売上総利益 393,954 367,678 △26,276 715,122 194%
販管費 373,092 544,422 171,330 526,673 97%
営業利益 20,862 △176,744 188,449 -107%
予想 188,448 100%
減価償却費 191,338 226,040 34,702 84,138 37%
 EBITDA 212,200 49,296 △162,904 272,587 553%
支配株主帰属利益 20,467 △550,069 △570,536 150,197 -27%
予想 150,197 100%
営業CF 246,412 △670 △247,082 182,216 -27196%
投資CF △175,371 △72,735 102,636 △85,156 117%
 フリーCF 71,041 △73,405 △144,446 97,060 -132%
財務CF 272,409 △78,950 △351,359 △56,853 72%
現預金 383,180 228,600 △154,580 268,920 40,320
定期預金(流動) 0 0 0 0 0
有価証券(流動) 0 0 0 0 0
 現金同等物 383,180 228,600 △154,580 268,920 40,320
流動資産 578,300 583,985 5,685 608,659 24,674
流動負債 458,116 464,097 5,981 441,150 △22,947
 流動資産ー流動負債 120,184 119,888 △296 167,509 47,621
 うち現金短借以外 △251,896 △72,832 179,064 △65,531 7,301
有利子負債(流動) 11,100 35,880 24,780 35,880 0
有利子負債(固定) 32,425 110,745 78,320 224,865 114,120
 有利子負債計 43,525 146,625 103,100 260,745 114,120
ネット有利子負債 △339,655 △81,975 257,680 △8,175 73,800
固定資産 807,563 278,260 △529,303 368,284 90,024
固定負債 346,511 263,585 △82,926 247,494 △16,091
純資産 581,236 134,563 △446,673 288,299 153,736
非支配株主持分 0 0 0 0 0
親会社所有者持分 581,236 134,563 △446,673 288,299 153,736
ROE 3.5% -408.8% 17.2%
ROA 1.5% -63.8% 9.6%
ROI 0.7% -5.7% 5.8%
(営業利益/有利負債+時価) ROI予想 5.8%
バリューデザイン(3960)の株式数,時価総額の見込み
上場前発行済株式 1,140,600
上場時発行済株式 311,900
引受価額 1,876.8
上場時調達見込額 585,374 千円
調達後親会社所有者持分 873,673
直近株価 2,040 発行価格
時価総額 2,963,100
非支配株主持分 0
純有利子負債 △593,549
事業価値 2,369,551
潜在株 180,700 潜在株割合 12.4%
バリューデザイン(3960)の株価指標
予想 実績
EBIT倍率 12.6 △13.4
EBITDA倍率 48.1
PER 22.2 △6.1
PBR 3.8