野村総合研究所(4307)がASG Group Limited社を280億円での買収を発表、財務、株価も分析 

2016/09/30

企業分析

【事業】

 野村総合研究所が実施している事業は以下の4つのサービスである。

①リサーチ、経営コンサルティング及びシステムコンサルティング
②システム開発及びパッケージソフトの製品販売
③共同利用型サービス及び情報提供サービス
④商品販売

 野村総研のセグメントの区分としては、コンサル事業、 金融IT 事業、産業IT 事業、IT基盤事業がる。売上、利益ともに大きい事業は金融IT事業であり売上、利益のおおよそ半分を占める。ない、IT基盤事業はグループ内部向けの売上が大部分を占める。

 直近のH28.6期においてはコンサル事業が前期比売上進捗率21%と苦戦している。

 主要な顧客は野村ホールディングス売上の16.3%、セブン&アイ売上の10.3%である。

 従業員数は連結で10,757人、親会社の人員は5,979人、平均年齢39.5歳、平均年収11,560千円である。

 
【損益】

 野村総合研究所の特徴として営業利益に占める減価償却の割合が比較的高いことが挙げられる。よって、営業利益とEBITDAの差が比較的大きめである。キャッシュフロー項目にも記載しているが積極的な投資を継続しているためである。

 H28.3期は増収増益となり、H29.3期世銅でも若干の増収増益を予想している。しかし、1Qの進捗率は売上高、利益ともに良好とは言えない状況である。


【キャッシュフロー】

 野村総合研究所のキャッシュフローについてH27.3期、H28.3期は営業CFは最終利益+減価償却費に近い金額となっており異常な変動はない。

 投資CFについてH28.3期は大幅なマイナスであり積極的な投資を実行している。有形固定資産の取得19十億円、無形固定資産の取得27十億円、投資有価証券の取得32十億円が大きかった。

 財務CFについてH27.3期、H28.3期ともに配当支払いをそれぞれ12十億円、16十億円実施している。しかし、H28.3期は自己株売却収入が36十億円あり財務CFはプラス9十億円となった。

 また、H28.6期の財務CFは自己株取得10十億円を実行しており、配当支払と合わせて20十億円の大幅な支出となっている。
  
  
【財政状態】
 
 野村総合研究所の財政状態について、直近のH28.6期において、有価証券(流動)が90十億円減少しており、現預金合計でも20十億円減少している。これは、H28.6期におけるCF計算書の減少額と一致するが、自己株取得10十億円及び配当支払9十億円を実施したためである。
 しかし、H28.6時点においてもネット有利子負債は▲80十億円あり、資金的には充分は余剰があると見れるし、適時開示公表の買収額28十億円についても自己資金で対応可能である。

 野村総合研究所の財政状態について直近のH28.6期で見ると固定資産317十億円の内訳として、有形固定資産66十億円(建物等41百万円)、無形固定資産72十億円(ソフトウェア60十億円、のれん12十億円)、投資有価証券114百万円と投資有価証券の割合が大きい。

 また、偶発債務として日本郵政インフォメーションテクノロジー㈱からシステム移行遅延にかかる訴訟16十億円をソフトバンクと連帯で受けている。
 



【株価】

 野村総合研究所は積極的な投資を行なってきており、今回の28十億円の投資についても特段大きい金額とは言えないかもしれない。
また、買収対象先の純資産が約9十億円であると買収額28十億円との差額である約20十億円についてはのれんの償却負担が生じる。のれんの償却年数は10年であり年間2十億円億円の償却負担が増加することになる。
 しかし、買収先の最終利益は過去3期で増加傾向にあり直近のH28.6期においては0.9十億円の最終利益を計上しているため事業が順調に成長していけば買収による償却負担は重くないと言える。
 当該買収が株価に与える影響は限定的であると考えられる。


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野村総合研究所(4307)
(単位:百万円) H27.3 H28.3 増減 H28.6 進捗/増減
売上高 405,984 421,439 15,455 100,391 24%
年間予想 435,000 23%
売上総利益 116,774 134,168 17,394 34,241 26%
販管費 65,287 75,873 10,586 20,553 27%
営業利益 51,487 58,295 13,688 23%
年間予想 62,000 22%
減価償却費 25,800 32,598 6,798 6,148 19%
 EBITDA 77,287 90,893 13,606 19,836 22%
支配株主帰属利益 38,880 42,648 3,768 10,351 24%
年間予想 43,500 24%
野村総合研究所(4307)のキャッシュフロー
営業CF 58,710 81,470 22,760 15,709 19%
投資CF △1,093 △75,344 △74,251 △15,771 21%
 フリーCF 57,617 6,126 △51,491 △62 -1%
財務CF △10,536 9,326 19,862 △20,027 -215%
野村総合研究所(4307)の財政状態
現預金 26,469 62,138 35,669 133,696 71,558
定期預金(流動) 0 0 0 0 0
有価証券(流動) 119,539 100,572 △18,967 9,651 △90,921
 現金同等物 146,008 162,710 16,702 143,347 △19,363
流動資産 298,565 306,943 8,378 257,818 △49,125
流動負債 113,208 134,304 21,096 106,826 △27,478
 流動資産ー流動負債 185,357 172,639 △12,718 150,992 △21,647
 うち現金短借以外 52,395 30,672 △21,723 28,319 △2,353
有利子負債(流動) 13,046 20,743 7,697 20,674 △69
有利子負債(固定) 51,623 43,125 △8,498 41,967 △1,158
 有利子負債計 64,669 63,868 △801 62,641 △1,227
ネット有利子負債 △81,339 △98,842 △17,503 △80,706 18,136
固定資産 294,647 314,751 20,104 317,831 3,080
固定負債 76,535 61,981 △14,554 58,887 △3,094
純資産 403,469 425,409 21,940 409,936 △15,473
非支配株主持分 13,156 12,825 △331 12,598 △227
親会社所有者持分 390,313 412,584 22,271 397,338 △15,246
野村総合研究所(4307)の利益指標 予想
ROE 10.0% 10.3% 10.4% 10.9%
ROA 6.6% 6.9% 7.2% 7.6%
ROI(営業利益/有利負債+時価) 6.1% 6.9% 6.5% 7.4%
野村総合研究所(4307)の株式数,時価総額の見込み
発行済株式 224,726,879 自己株式除く
増資時発行済株式 0
上場時調達見込額 0 千円
調達後親会社所有者持分 397,338
直近株価 3,470 直近時点
時価総額 779,802
非支配株主持分 12,598
純有利子負債 △80,706
事業価値 711,694
潜在株 1,770,120 潜在株割合 0.8%
野村総合研究所(4307)の株価指標
指標 予想 実績
EBIT倍率 11.5 12.2
EBITDA倍率 7.8
PER 18.1 18.4
PBR 2.0
野村総合研究所(4307)のセグメント別業績
売上(百万円) H27.3 H28.3 増減 H28.6 進捗/増減
コンサル 27,749 28,823 1,074 6,138 21%
金融IT 237,649 253,802 16,153 59,717 24%
産業IT 98,974 102,859 3,885 25,495 25%
IT基盤 113,505 110,044 △3,461 30,355 28%
営業利益(百万円) H27.3 H28.3 増減 H28.6 進捗/増減
コンサル 5,959 5,487 △472 350 6%
金融IT 22,621 29,171 6,550 6,691 23%
産業IT 11,769 9,974 △1,795 2,166 22%
IT基盤 8,636 11,575 2,939 3,801 33%
セグメント 説明
コンサル 経営・事業戦略及び組織改革等の立案・実行を支援、全般的ITシステムコンサルも実施。
金融IT 金融業顧客向けに、システムコンサルティン、ITソリューションを提供
産業IT 流通業、製造業、サービス業や公共向けに、システムコンサルティン、ITソリューションを提供
IT基盤 他セグメントに対しデータセンターの運営管理やIT基盤・ネットワーク構築等のサービスを提供