IPO予定の日本モーゲージサービス(7192)の財務分析と初値予想

2016/11/16

IPO

【事業】

設立:2005年8月
本社所在地:東京都港区西新橋
事業内容:住宅関連企業を対象に金融、保険、コンサル等のサービスを提供
業種分類:その他金融業
決算:3月
監査人:トーマツ
主幹事証券:みずほ証券
社長:鵜澤泰功氏、昭和30年生まれ

(事業内容)

住宅金融事業、住宅瑕疵保険等事業、住宅アカデメイア事業を実施。
直近決算では住宅金融事業、住宅アカデメイア事業が伸びている。

住宅金融事業:『MSJフラット35』の貸付業務、『MSJプロパーつなぎローン』の貸付業務、店舗を置かず、全国のアライアンスパートナー(コンサルティング会社、ローン取扱専業会社、不動産会社、工務店等)と提携することにより需要者をソーシングしている。

住宅瑕疵保険等事業:新築住宅かし保険(法定保険)の販売業務、住宅性能評価・検査等各種サービス業務など

住宅アカデメイア事業:住宅産業の合理化・システム化に向けた各種情報・ツール・コンサルテーションなどのソリューションを提供する事業を実施


(関係会社)

ハウスジーメン:住宅瑕疵保険等事業、営業収益2,931百万円、当期利益88百万円
アカデメイア:住宅アカデメイア事業、営業収益723百万円、当期利益29百万円


(上場時調達資金使途)

株式会社住宅アカデメイアにおける住宅アカデメイア事業の事業拡大に伴う運営費等の運転資金、システム改修に使用。


詳細な数値分析はこちら。




【損益】

(売上・売上総利益)

営業収益はH28.3期で前期比32%増加、H28.9期単純年換算で12%の増加と増加傾向にある。
直近のH28.9期では住宅金融事業及び住宅アカデミアの伸びが大きい。住宅瑕疵保険事業は前年度並みの水準である。

売上総利益率は55%程度で推移しているが、H28.9期は売上の伸びがあるため売上総利益率は58.8%まで上昇している。


(販管費)

売上の増加に伴い販管費もH28.3期は前期比20%増加、H28.9期も単純年換算額で7%の増加となった。

H28.9期の販管費1,285百万円のうち主なものは給与手当426百万円、取次店手数料327百万円、賞与引当金繰入31百万円である。

H27.3期、H28.3期も同様の科目が販管費として計上されている。


(営業損益)

安定した売上高の増加と売上増加に伴う粗利率の改善が販管費の増加を上回っており、H28.3期、H28.9期ともに営業利益はそれぞれ229%、62%の増加となった。
営業利益率も上昇傾向にあり、支配株主利益率も上昇傾向にある。


(最終利益)

各年度とも営業外、特損項目に大きなものはなく、営業利益額の増加に応じて最終利益も増加傾向にある。


【キャッシュフロー】

(営業キャッシュフロー)

各年度ともに営業利益、最終利益はプラスとなっているが、H27.3期は▲2,236百万円、H28.9期は▲220百万円となった。
H27.3期は営業未収金の増加が1,940百万円あったためであり、H28.9期は営業未収入金の増加196百万円、営業貸付金の増加342百万円があったためである。
営業キャッシュフローにおける営業未収金、営業貸付金の増減の占める割合が大きくブレが生じることにより営業キャッシュフローも大きくブレル傾向にある。


(投資キャッシュフロー)

無形固定資産取得による支出が各期で数千万円程度発生している。
ソフトウェアへの投資と考えられる。


(財務キャッシュフロー)  

営業キャッシュフローのマイナスは財務キャッシュフローのプラスによりカバーされており、H27.3期は短期借入金の増加2,576百万円、H28.9期も短期借入金の増加555百万円があった。


【財政状態】
 
(財務諸表の特徴)

金融業であるため営業貸付金、営業未収入金の額とそれに見合う短期借入金の額が大きくなるため自己資本比率が低くなってしまう傾向にある。
また、営業貸付金、営業未収金に比較し、貸倒引当金の計上額が少額である点も特徴的である。

なお、H28.3期において繰越欠損金55百万円(税額ベース)を保有しているが、大部分について評価性引当額が計上されている。

(流動資産・負債)

直近期であるH28.9期の流動資産17,117百万円のうち、現金以外では営業未収金が5,980百万円、営業貸付金が6,518百万円と大部分を占める。日本モーゲージサービスは金融業であるため営業資産が多額になる性質を持つ。
このような多額の営業資産のための調達資金として流動負債14,908百万円のうち短期借入金が12,416百万円を占める。
流動比率は115%と100%を超えており短期的な資金繰りに問題なし。


(固定資産)

H28.9期の固定資産総額438百万円のうちソフトウェアが199百万円を占める。

(固定負債)

大部分が責任準備金である。

(自己資本、有利子負債) 

金融業であるため自己資本比率は低くH28.9期で11%である
しかし、営業資産よりも利益の積みあがりが大きく自己資本比率は改善傾向にある。


【株価】

(将来見込み)

業績は順調に増収増益を継続しているが、特にアカデメイア事業の伸びが大きい。
IPOによる調達資金もアカデメイア事業への投資を実施するとのことであり期待できる。
業種はその他金融機関であり想定発行価格に基づくPERは7.7倍と低めになっているが業績の伸びとアカデメイア事業の将来性からすると株価の上昇も期待できそうである。

(PER指標)

その他金融事業における東証1部平均PERは11.7倍であるため想定発行価格を前提としたPER7.7倍はやや安いと考えられる。
業績の伸びから判断する将来性を加味するとさらなる割安感はある。

(PBR指標)

その他金融事業における東証1部平均PBRは1.1倍でるが、新規IPO銘柄であり想定価格に基づくPBR1.9倍も割高の印象はない。

(その他)

市場別、業種別PER、PBRはこちら。


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日本モーゲージサービス(7192)

(単位:千円) H27.3 H28.3 増減 H28.9 進捗/増減
営業収益 3,977,126 5,253,417 1,276,291 2,944,452 56%
年間予想 5,888,904 50%
営業総利益 2,173,339 2,956,840 783,501 1,730,439 59%
販管費 2,006,046 2,406,863 400,817 1,285,708 53%
営業利益 167,293 549,977 382,684 444,731 81%
年間予想 889,462 50%
減価償却費 61,405 74,810 13,405 39,485 53%
 EBITDA 228,698 624,787 396,089 484,216 78%
支配株主帰属利益 61,333 376,169 314,836 308,757 82%
年間予想 617,514 50%
※年間予想はQ数値を年次に単純換算した金額
H27.3 H28.3 H28.9 予想
売上総利益率 54.6% 56.3% 58.8%
営業利益率 4.2% 10.5% 15.1% 15.1%
支配株主帰属利益率 1.5% 7.2% 10.5% 10.5%
日本モーゲージサービス(7192)のセグメント情報
営業収益(千円) H27.3 H28.3 増減 H28.9 進捗/増減
住宅金融 1,173,916 1,542,057 368,141 1,006,586 65%
住宅瑕疵保険 2,594,840 3,002,820 407,980 1,484,011 49%
住宅アカデメイア 225,855 723,336 497,481 469,546 65%
営業利益(千円) H27.3 H28.3 増減 H28.9 進捗/増減
住宅金融 213,156 380,097 166,941 339,942 89%
住宅瑕疵保険 38,919 135,068 96,149 66,380 49%
住宅アカデメイア △85,525 33,142 118,667 38,257 115%
日本モーゲージサービス(7192)のキャッシュフロー
H27.3 H28.3 増減 H28.9 増減
営業CF △2,236,377 101,442 2,337,819 △220,059 -217%
投資CF △56,080 △19,845 36,235 △53,927 272%
 フリーCF △2,292,457 81,597 2,374,054 △273,986 -336%
財務CF 2,546,410 391,890 △2,154,520 552,397 141%
日本モーゲージサービス(7192)の財政状態
H27.3 H28.3 増減 H28.9 増減
現預金等 2,959,873 3,420,272 460,399 3,652,987 232,715
流動資産 14,918,423 16,083,981 1,165,558 17,117,888 1,033,907
流動負債 13,499,497 14,241,053 741,556 14,908,949 667,896
 流動資産ー流動負債 1,418,926 1,842,928 424,002 2,208,939 366,011
 うち現金短借以外 9,775,513 10,283,706 508,193 10,972,862 689,156
有利子負債(流動) 11,316,460 11,861,050 544,590 12,416,910 555,860
有利子負債(固定) 10,000 0 △10,000 0 0
 有利子負債計 11,326,460 11,861,050 534,590 12,416,910 555,860
ネット有利子負債 8,366,587 8,440,778 74,191 8,763,923 323,145
固定資産 474,278 446,590 △27,688 438,710 △7,880
固定負債 629,342 730,832 101,490 777,608 46,776
純資産 1,263,862 1,558,686 294,824 1,870,041 311,355
非支配株主持分 58,701 10,694 △48,007 13,279 2,585
親会社所有者持分 1,205,161 1,547,992 342,831 1,856,762 308,770
流動比率 111% 113% 115%
固定長期適合率 25% 20% 17%
自己資本比率 8% 9% 11%
有利子負債比率 896% 761% 664%
日本モーゲージサービス(7192)の利益指標
H27.3 H28.3 H28.9 予想
ROE 5.1% 24.3% 24.6% 24.6%
ROA 0.4% 2.3% 3.4% 3.4%
日本モーゲージサービス(7192)の株式数,時価総額の見込み
上場前発行済株式 2,024,000 自己株式除く
上場時発行済株式 355,000
引受価額 1,849.2
上場時調達見込額 656,466 千円
調達後親会社所有者持分 2,513,228
直近株価 2,010 想定発行価格
時価総額 4,781,790
非支配株主持分 13,279
純有利子負債 8,107,457
事業価値 12,902,526
潜在株 0 潜在株割合 0.0%
日本モーゲージサービス(7192)の株価指標
指標 H27.3 H28.3 H28.9 予想
EBIT倍率 77.1 23.5 14.5 14.5
EBITDA倍率 56.4 20.7 13.3
営業利益PER 28.6 8.7 5.4 5.4
PER 78.0 12.7 7.7 7.7
PBR NA NA 1.9
日本モーゲージサービス(7192)の株主構成
H28.3
政府 0%
金融機関 14%
金融商品取引業者 22%
その他法人 59%
外国法人等 0%
個人 5%
*ビルダーズシステム研究所(役員の会社)23%
日本モーゲージサービス(7192)における従業員の状況
H28.10
連結人員 164
親会社単体人員 52
親会社単体平均年齢 43.5
親会社単体平均年収 5,553 千円