富士フィルムHD(4901)による和光純薬工業買収の影響分析

2016/12/16

企業分析

富士フィルムHDは、武田薬品工業傘下の試薬大手、和光純薬工業を買収すると発表した。

平成29年2月27日以降に公開買付けを実施することにより、武田が持つ70.87%と自己が保有する持株9.71%以外の株式の取得を目指す。

実際の株取得の決裁は平成29年4月21日から実施するため今期決算への影響はない。

富士フィルムCEOのコメントによると富士フィルムのナノテクノロジーや化学合成技術と、和光純薬の試薬、化成品開発力を組み合わせてもっと競争力の強い製品を開発し、事業拡大できるとのことである。

特に重要なのがヘルスケアとし、再生医療分野、体外診断分野、製造受託分野でシナジーが見込めるとのこと。


TOB対象者となる和光純薬工業は大正11年に武田薬品工業から分離し、試薬、臨床検査薬、化成品の製造販売を事業領域としてきた。



買付価格:

1株8,535円

直近の平成28年9月末時点での純資産額は125,899百万円であり、発行済株式数が33,342千株であるため、1株簿価純資産は3,776円となる。

よって、買付価格を前提としたPBRは2.26倍である。

また、平成28年9月期の最終利益は2,889百万円であり、1株あたり半期利益は86.6円、年換算利益は173.2円となる。

当該年間利益と買収価格に基づいたPERは49.3倍となる。

ちなみに、平成28年3月期の最終利益は5,662百万円であるため、1株あたり利益は169.8円、買収価格に基づいたPERは50.2倍となる。



のれんの額:

富士フィルムは和光純薬工業を連結子会社化するが90%の株式を全て取得するとした場合、約33,342千株×90%=30,000千株を取得することになる。

ただし、和光純薬工業が自己株として11,364千株(買付け価格は同じ8,535円で必要資金は金融機関からの借入600億円で対応)を取得することになっている。

よって、33,342千株-11,364千株ー679千株(対象会社取得済自己株)ー3,170千株(富士フィルム保有分)=18,129千株×8,535円=約1,547億円の買収資金が必要となる。


のれんの額は直近期一株あたり純資産3,776円であるため、(買付価格8,535円-3,776円)×18,129千株=86,275百万円となる。





富士フィルムの損益に与える影響:

富士フィルムHDの会計方針において、米国基準を採用しており、のれんの償却はなく減損テストによる減損のみである。
事業計画通りの利益を確保していれば減損処理の必要もなくなるため、日本基準によるのれん償却による損益インパクトはないと言える。

また、富士フイルムHDのH28.3期の営業利益は191十億円に対し、和光純薬の営業利益は直近2期で7十億円程度であるため、富士フィルムHDの利益に与えるインパクトは大きくはないと言える。

貸借対照表に与えるインパクトとして、富士フイルムHDのH28.3期の営業権の額は506十億円であるが、和光純薬工業買収により営業権は86十億円増加することとなる。