IPO予定のNo.1(3562)の財務分析と初値予想

2017/02/26

IPO

【事業】

設立:1989年9月
本社所在地:東京都千代田区内幸町一丁目
事業内容:OA機器及び情報セキュリティ関連機器の販売及び保守サービス業
業種分類:卸売業
決算:2月末
上場市場:JASDAQスタンダード
監査人:三優監査法人
主幹事証券:SBI証券
社長:辰巳崇之、昭和39年生まれ
株主:光通信系会社が30.6%を占める


【過去の業績推移】

直近5年の推移において売上高はH24.2期が5,133百万円だったものがH28.2期では6,797百万円まで伸びており5年間で32%の伸びを達成した。

経常利益も基本的には増益基調であり、H24.2期が140百万円だったのに対しH28.2期は209百万円まで増加した。ただし、H28.2期は前年比7%減益となった。

最終利益はH25.2期の54百万円の赤字以外は黒字で推移している。


総資産は5年間で1,955百万円から2,494百万円まで拡大した。

自己資本比率は5年間で9.4%から23.3%まで改善している。

従業員数は5年間で240人から355人まで拡大した。



【実施する事業】

①オフィスコンサルタント事業(直近H28.11期 売上3,499百万円、営業利益141百万円)

中小企業及び個人事業主に対して、OA関連商品及びそれらを取り巻く情報セキュリティ機器(自社企画商品である「WALLI OR」と「Cl ub One Syst ems」)ブランの販売を実施。
また、上記について販売代理店への販売も実施。
その他、ホームページ、パンフレット等の広告宣伝手段の提供、税理士、社会保険労務士及び弁護士等と連携したソリューションサービスも提供。


②システムサポート事業(直近H28.11期 売上1,781百万円、営業利益53百万円)

販売した機器の保守・メンテナンス及びサービスを実施。他社購入製品も一括してサポート実施。
「テクニカルコンシェルジュ」と呼ぶサービスマンが定期的に顧客を巡回し、機器の各種設定及び障害対応を実施。
その他、アスクルの代理店としてオフィス関連商品の販売も実施。



【損益(直近)】


(売上、売上総利益)

売上高はH28.2期、H28.11期ともに前期比増加でそれぞれ8%、4%の増加で推移している。
特に季節的変動により4Qの売上が増加するにも関わらずH28.11期時点で前年比プラス4%は健闘していると言っていいのではないか。

粗利率はほぼ40%で推移しているため、売上の増加に応じて粗利額も増加傾向にある。

なお、H28.2期のオフィスコンサル事業の売上4,509百万円のうちクレディセゾン向けが2,488百万円を占める。



(販管費、営業損益)

売上、粗利の増加にともない販管費も増加しているがH28.2期は販管費の増加率が前期比7%と粗利率の増加率よりも小さかったため営業利益額は前期比15%増加の268百万円を達成した。

H28.11期は販管費の増加が前期比4%と粗利額の増加率3%よりも大きかったため営業利益(単純年換算)は前期比▲3%で推移している。ただし、4Qで売上増加傾向にあり季節的変動要素もあると考えられる。


(最終利益)

「最終利益÷営業利益」比率はH27.2期で52.6%、H28.2期で38.7%、H28.11期で59.3%と低くなっている。

法人税負担率において交差費加算がH27.2期で11.1%、H28.2期で8.9%と高い点と、H28.2期は営業外費用として貸倒引当金繰入額を51百万円計上したことが要因である。




【財政状態】
 

(財務諸表の特徴)

ネットキャッシュが536百万円あるものの有利子負債が1,032百万円あるため自己資本比率は30%、有利子負債比率が107%となっている。
固定資産で重要なものはなく、資産の大部分を現預金(総資産の48%)、売掛金(総資産の27%)が占めている。


(ROAとROE)

直近決算期であるH28.11期の純資産と想定発行価格による増資と直近決算期の利益を前提としたROA、ROEはそれぞれ4.2%、11.4%である。

IPO銘柄としては高くなく、資産(特に現預金)が余剰であると見ることもできる。



(IPO調達資金が自己資本へ与える影響)

想定発行価格と公募株式数に基づく調達資金は386百万円であり、直近純資産に対して40%の自己資本増加となる。



【株価】


(将来見込み)

売上の増加は継続しており、利益も増加傾向にあるためIPO後も引き続き増収増益が継続するか否かがポイントとなるが、爆発的な増収増益は期待できないかもしれない。

IPO資金と手元資金をどのように有効利用していくかがポイントとなりそうである。


(PER指標)

直近決算期であるH28.11期の利益を単純年換算した利益と想定発行価格を前提としたPER(希薄化株式考慮済)は16.5倍である。


(PBR指標)

直近決算期であるH28.11期の純資産と想定発行価格による増資を前提としたPBRは1.9倍である。


(その他)

想定発行価格による増資とH28.11期の単純年間換算営業利益に基づいたEBIT倍率は5.1倍であり、EBITDA倍率は4.9倍である。

ネットキャッシュを保有しており若干割安感はある。


市場別、業種別PER、PBRの一覧はこちら。

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No.1(3562)
(単位:千円) H27.2 H28.2 増減 H28.11 進捗/増減
売上高 6,321,392 6,797,197 475,805 5,280,969 78%
年間予想 7,041,292 75%
売上総利益 2,515,340 2,718,073 202,733 2,108,881 78%
販管費 2,281,020 2,449,214 168,194 1,913,448 78%
営業利益 234,320 268,859 34,539 195,433 73%
年間予想 260,577 75%
減価償却費 34,458 17,320 △17,138 10,739 62%
 EBITDA 268,778 286,179 17,401 206,172 72%
支配株主帰属利益 123,277 104,041 △19,236 115,982 111%
年間予想 154,643 75%
簡易営業キャッシュフロー 157,735 121,361 △36,374 126,721
年間予想 168,961
※年間予想はQ数値を年次に単純換算した金額
H27.2 H28.2 H28.11 予想
売上総利益率 39.8% 40.0% 39.9%
営業利益率 3.7% 4.0% 3.7% 3.7%
支配株主帰属利益率 2.0% 1.5% 2.2% 2.2%
最終利益÷営業利益 52.6% 38.7% 59.3% 59.3%
No.1(3562)の財政状態
H28.11
現預金等 1,568,627
流動資産 2,827,910
流動負債 1,933,814
 流動資産ー流動負債 894,096
 うち現金短借以外 187,964
有利子負債(流動) 862,495
有利子負債(固定) 170,000
 有利子負債計 1,032,495
ネット有利子負債 △536,132
固定資産 438,924
固定負債 364,662
純資産 968,358
非支配株主持分 1,046
親会社所有者持分 967,312
流動比率 146%
固定長期適合率 33%
自己資本比率 30%
有利子負債比率 107%
No.1(3562)の利益指標
H28.11 予想
ROE 11.4% 11.4%
ROA 4.2% 4.2%
No.1(3562)の株式数,時価総額の見込み
上場前発行済株式 1,249,290 自己株式除く
上場時発行済株式 286,000 オーバーアロットメント含
引受価額 1,352.4
上場時調達見込額 386,786 千円
調達後親会社所有者持分 1,354,098
上場時増資額/直近純資産 40%
直近株価 1,470 想定発行価格
時価総額 2,256,876 千円
非支配株主持分 1,046
純有利子負債 △922,918
事業価値 1,335,004
潜在株 204,390 潜在株割合 13.3%
No.1(3562)の株価指標
指標 H28.11 予想
EBIT倍率 5.1 5.1
EBITDA倍率 4.9
営業利益PER 9.8 9.8
PER 16.5 16.5
PBR 1.9
No.1(3562)における従業員の状況
H29.1
連結人員 392
親会社単体人員 392
親会社単体平均年齢 32.3
親会社単体平均年収 4,643 千円
※オフィスコンサルタント事業216人、システムサポート事業107人、共通69人。