IPO予定のジャパンエレベータサービスホールディングス(6544)の財務分析と初値予想

2017/02/28

IPO

【事業】

設立:1994年10月
本社所在地:東京都中央区日本橋
事業内容:エレベーター、エスカレーターの保守、保全、リニューアル業務
業種分類:サービス業
決算:3月
上場市場:マザーズ
監査人:トーマツ
主幹事証券:野村證券
社長:石田克史、昭和41年生まれ、エスイーシーエレベータ社等を経て平成6年に当社設立。


【過去の業績推移】

直近5年の推移において売上高はH23.9期(単体)で56億だったがH25.9期(単体)で77億円まで拡大させた。
また、H27.3期(連結)は104億円、H28.3期(連結)は118億円と拡大傾向にある。

経常利益はも拡大傾向にあり、H23.9期(単体)で301百万円だったものがH28.3期(連結)では699百万円まで拡大している。

最終利益はH25.9期(単体)、H26.3期(変則決算単体)で最終赤字となっていたが、H27.3期(連結)、H28.3期(連結)はともに3億円を超える黒字となった。


総資産は5年間で2,801百万円(単体)から6,552百万円(連結)まで拡大した。

自己資本比率も5年間で6.7%から12.1%まで改善している。

従業員数は5年間で373人から832人までと急拡大している。


【実施する事業】

独立系メンテナンス事業として成長。

三菱電機株式会社、株式会社日立製作所、東芝エレベータ株式会社、日本オーチス・エレベータ株式会社、フジテック株式会社の国内主要メーカー製機種に対応した保守保全業務を実施可能。

対象地域は首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)である。

(保守保全業務)※H28.12時点で売上8,072百万円。

「フルメンテナンス契約(FM契約)」と「点検契約(POG契約)」の2種類がある。

リモート遠隔点検サービス「PRI ME」により遠隔診断操作や遠隔監視状況の管理を実施。エンジニアの所在や状況をGPSにより常に管理。


(リニューアル業務)※H28.12時点で受注残1,151百万円、売上1,687百万円。

設置後20年程度経過したエレベーターに対し、制御盤・巻上機等の主要部品の一式取り替え工事、既設品の撤去・新設工事を実施。


売上高の10%を超える特定売先はなく顧客は分散している。


また、設備投資予定としてエレベーターの遠隔監視センター、地震発生時の統括、研究開発、パーツ管理及び教育研修等の機能を集約したJES総合技術センター(仮称)建設を予定している。ダイワハウスとの請負金額は26億円。H29.10完成予定。


【損益(直近)】


(売上、売上総利益)

売上はH28.3期、H28.12期3Qともに前期比10%以上の増収を継続している。

粗利率がH28.12期が31.9%と前期比1.7%低下したため、売上は伸びたものの粗利額の伸びは前期比4%の増加となっている。



(販管費、営業損益)

H28.3期は販管費が前期比14%増加となったが、粗利額の伸びである14%よりも小さかったため、売上高の増加と相俟って営業利益は前期比24%の伸びとなった。

H28.12期は販管費の増加が前期比15%で推移しているものの粗利額の増加が4%と伸び悩んだため売上増加にも関わらず営業利益は前期比マイナス44%で推移している。


(最終利益)

「最終利益÷営業利益」比率は50~55%で推移している。

営業外費用として支払利息が年額30~40百万円計上されていることが要因である。


【財政状態】
 

(財務諸表の特徴)

ネットデットが3,090百万円、自己資本比率が12%、有利子負債比率が461%であり有利子負債依存度が高い。

また、有形固定資産にリース資産が占める割合が高い点も特徴的である。


(ROAとROE)

直近決算期であるH28.12期の純資産と想定発行価格による増資と直近決算期の利益を前提としたROA、ROEはそれぞれ2.3%、10.5%であり高くはない水準である。



(IPO調達資金が自己資本へ与える影響)

想定発行価格と公募株式数に基づく調達資金は1,011百万円であり、直近純資産に対して114%の自己資本増加となるため、IPO資金がBSに与える影響は大きめである。



【株価】


(将来見込み)

売上高は増加しているものの特にH28.12期3Qの利益水準が低下している点は留意すべき。

また、新規大型設備投資が損益に与える影響も無視できない。


(PER指標)

直近決算期であるH28.12期の利益を単純年換算した利益と想定発行価格を前提としたPER(希薄化株式考慮済)は27.4倍である。


(PBR指標)

直近決算期であるH28.12期の純資産と想定発行価格による増資を前提としたPBRは2.9倍である。


(その他)

想定発行価格による増資とH28.12期の単純年間換算営業利益に基づいたEBIT倍率は18.2倍であり、EBITDA倍率は13.2倍である。



市場別、業種別PER、PBRの一覧はこちら。

  このエントリーをはてなブックマークに追加

スポンサーリンク


ジャパンエレベータサービスホールディングス(6544)
(単位:千円) H27.3 H28.3 増減 H28.12 進捗/増減
売上高 10,499,257 11,891,378 1,392,121 9,780,832 82%
年間予想 13,041,109 75%
売上総利益 3,500,883 3,991,976 491,093 3,121,431 78%
販管費 2,912,602 3,262,364 349,762 2,816,945 86%
営業利益 588,281 729,612 141,331 304,486 42%
年間予想 405,981 75%
減価償却費 287,718 297,689 9,971 116,656 39%
 EBITDA 875,999 1,027,301 151,302 421,142 41%
支配株主帰属利益 316,975 402,993 86,018 149,405 37%
年間予想 199,207 75%
簡易営業キャッシュフロー 604,693 700,682 95,989 266,061
年間予想 354,748
※年間予想はQ数値を年次に単純換算した金額
H27.3 H28.3 H28.12 予想
売上総利益率 33.3% 33.6% 31.9%
営業利益率 5.6% 6.1% 3.1% 3.1%
支配株主帰属利益率 3.0% 3.4% 1.5% 1.5%
最終利益÷営業利益 53.9% 55.2% 49.1% 49.1%
ジャパンエレベータサービスホールディングス(6544)の財政状態
H28.12
現預金等 1,025,244
流動資産 4,153,064
流動負債 4,872,434
 流動資産ー流動負債 △719,370
 うち現金短借以外 1,564,286
有利子負債(流動) 3,308,900
有利子負債(固定) 807,250
 有利子負債計 4,116,150
ネット有利子負債 3,090,906
固定資産 3,341,627
固定負債 1,729,615
純資産 892,642
非支配株主持分 6,398
親会社所有者持分 886,244
流動比率 85%
固定長期適合率 127%
自己資本比率 12%
有利子負債比率 461%
ジャパンエレベータサービスホールディングス(6544)の利益指標
H28.12 予想
ROE 10.5% 10.5%
ROA 2.3% 2.3%
ジャパンエレベータサービスホールディングス(6544)の株式数,時価総額の見込み
上場前発行済株式 7,940,000 自己株式除く
上場時発行済株式 2,075,000 オーバーアロットメント含
引受価額 487.6
上場時調達見込額 1,011,770 千円
調達後親会社所有者持分 1,898,014
上場時増資額/直近純資産 114%
直近株価 530 想定発行価格
時価総額 5,307,950 千円
非支配株主持分 6,398
純有利子負債 2,079,136
事業価値 7,393,484
潜在株 287,000 潜在株割合 2.9%
ジャパンエレベータサービスホールディングス(6544)の株価指標
指標 H28.12 予想
EBIT倍率 18.2 18.2
EBITDA倍率 13.2
営業利益PER 13.4 13.4
PER 27.4 27.4
PBR 2.9
ジャパンエレベータサービスホールディングス(6544)における従業員の状況
H29.1
連結人員 922
親会社単体人員 120
親会社単体平均年齢 38.5
親会社単体平均年収 5,874 千円
一人あたり年間粗利(連結) 4,514 千円
一人あたり年間販管費(連結) 4,074 千円