IPO予定のアセンテック(3565)の財務分析と初値予想

2017/03/22

IPO

【事業】

設立:2009年2月
本社所在地: 東京都豊島区南池袋
事業内容:仮想デスクトップに関連する製品開発、販売及びコンサルティングサービスの提供
業種分類:卸売業
決算:1月
上場市場:マザーズ
監査人:新日本
主幹事証券:SBI証券
社長:佐藤直浩、昭和33年生まれ、日本テキサス・インスツルメンツ、日本IBMを経てアセンックの分割元会社であるインテア・ホールディングスにH18に入社。


【過去の業績推移】

直近5年の推移において売上高はH24.1期(単体)で28億円だったものがH28.1期(単体)で22億円と大幅な増加傾向にはない。
しかし、H28.10(3Q)では24億円の売上を確保しており足元では好調のようである。

経常利益もここ5年間はH25.1期(単体)の316百万円は突出しているがその他の期は数千万円程度の利益水準である。
H28.10(3Q)は売上と同様127百万円の利益は確保しており好調である。

最終利益も経常利益に連動した金額で推移している。


総資産は5年間で229百万円から527百万円まで拡大した。

自己資本比率も5年間で21%から64%まで改善している。

従業員数は5年間で41人から55人まで増加しているものの、売上、利益と同様に急拡大ではない。


【実施する事業】



①仮想デスクトップビジネス
サーバ側にデスクトップ環境を集約しネットワークを介してデスクトップの画面イメージを配信し、シンクライアント端末やパソコン、タブレットなどにより利用するソリューション。
セキュリティ向上、運用管理者の負担軽減が達成できる。


②仮想インフラ及びストレージビジネス
フラッシュメモリーを活用したストレージで、従来の磁気ディスク方式に比べモーター等の部品がなく高速、低消費電力、高寿命のフラッシュストレージの提供を実施。


③プロフェッショナルサービスビジネス
仮想デスクトップの検討段階におけるコンサルティングから構築段階における設計・構築、利用段階
における保守、運用までの一貫した技術支援を提供。


④クラウドサービス
GMOインターネットとの協業による仮想デスクトップのクラウド型サービス「Resalio DaaS(レサリオダース)」、ログイン認証を2段階で行うことでセキュリティを強化する日本セーフネットのクラウド認証サービス「Authentication SERVICE(オーセンティケーション サービス)」を提供。



主な売り先は日本IBM(11.8%)、日本ビジネスシステムズ(3.1%)などである。
主な仕入先はシトリックス・システムズ・ジャパン(21.2%)、Nimble Storage,Inc(20.2%)などである。
Nimble Storage,Incは仕入額が急拡大している。
※割合はH28.10期の総額に占める割合。

海外から仕入れるソフトウエア、ハードウエアの代金を米ドル建てで仕入しているため為替リスクを有しており、為替予約を行なっている。
H29.1時点でデリバティブとして為替予約の米ドル買残が198百万円ある。


上場調達資金約250百万円はUSBシンクライアント「Resalio Lynx」のバージョンアップや小型PC20台分の機能を搭載した仮想デスクトップ専用サーバ「リモートPCアレイ」の後継機などの研究開発費用などに使用見込みである。


【損益(直近)】


(売上、売上総利益)

売上はH28.1期が前期比マイナス16%であったが、H29.1期は前期比50%プラスと大幅に回復し売上高は32億円まで拡大した。

粗利額について、粗利率の向上と売上高の拡大により、H29.1期は636百万円まで拡大した。



(販管費、営業損益)

販管費はH29.1期は売上、粗利の拡大により前期比10%増加となったが、粗利額の拡大インパクトが大きく、H28.1期の営業赤字5百万円から一転して営業利益はH29.1期に248百万円を達成した。

なお、H28.1期の販管費351百万円のうち205百万円は人件費であり大部分を人件費が占めている。


(最終利益)

「最終利益÷営業利益」比率はH29.1期で56.4%とやや低めとなった。

営業外費用として為替差損40百万円の計上があったためである。



【財政状態】
 

(財務諸表の特徴)

無借金でありネットキャッシュを602百万円保有しており財務内容は非常に安定している。


(ROAとROE)

直近決算期であるH29.1期の純資産と想定発行価格による増資と直近決算期の利益を前提としたROA、ROEはそれぞれ9.2%、15.1%と高水準である。



(IPO調達資金が自己資本へ与える影響)

想定発行価格と公募株式数に基づく調達資金は254百万円であり、直近純資産に対して38%の自己資本増加となる。



【株価】


(将来見込み)

直近のH29.1期の業績が急拡大しており今後の拡大も期待できる。
キャッシュリッチでありEBIT倍率、EBITDA倍率も低く、PERも高くない。

IPO当選枚数が4,510枚であるため需給関係からも株価は期待できる。


(PER指標)

直近決算期であるH29.1期の利益を単純年換算した利益と想定発行価格を前提としたPER(希薄化株式考慮済)は20.8倍である。


(PBR指標)

直近決算期であるH29.1期の純資産と想定発行価格による増資を前提としたPBRは3.1倍である。


(その他)

想定発行価格による増資とH29.1期の単純年間換算営業利益に基づいたEBIT倍率は7.3倍であり、EBITDA倍率は6.9倍である。


市場別、業種別PER、PBRの一覧はこちら。

  このエントリーをはてなブックマークに追加

スポンサーリンク


アセンティック(3565)
(単位:千円) H27.1 H28.1 増減 H29.1 進捗/増減
売上高 2,603,714 2,180,727 △422,987 3,275,608 150%
年間予想 3,275,608 100%
売上総利益 402,463 346,284 △56,179 636,723 184%
販管費 363,365 351,823 △11,542 388,229 110%
営業利益 39,098 △5,539 △44,637 248,494 -4486%
年間予想 248,494 100%
減価償却費 10,232 11,907 1,675 14,275 120%
 EBITDA 49,330 6,368 △42,962 262,769 4126%
支配株主帰属利益 29,208 △2,128 △31,336 140,110 -6584%
年間予想 140,110 100%
簡易営業キャッシュフロー 39,440 9,779 △29,661 154,385
年間予想 154,385
※年間予想はQ数値を年次に単純換算した金額
H27.1 H28.1 H29.1 予想
売上総利益率 15.5% 15.9% 19.4%
営業利益率 1.5% -0.3% 7.6% 7.6%
支配株主帰属利益率 1.1% -0.1% 4.3% 4.3%
最終利益÷営業利益 74.7% 38.4% 56.4% 56.4%
アセンティック(3565)の財政状態
H29.1
現預金等 602,634
流動資産 1,196,544
流動負債 562,317
 流動資産ー流動負債 634,227
 うち現金短借以外 31,593
有利子負債(流動) 0
有利子負債(固定) 0
 有利子負債計 0
ネット有利子負債 △602,634
固定資産 77,574
固定負債 40,067
純資産 671,734
非支配株主持分 0
親会社所有者持分 671,734
流動比率 213%
固定長期適合率 11%
自己資本比率 53%
有利子負債比率 0%
アセンティック(3565)の利益指標
H29.1 予想
ROE 15.1% 15.1%
ROA 9.2% 9.2%
アセンティック(3565)の株式数,時価総額の見込み
上場前発行済株式 1,399,000 自己株式除く
うち売出株数 290,000 当選枚数
上場時発行株式 161,000 オーバーアロットメント含 4,510
引受価額 1,582.4
上場時調達見込額 254,766 千円
調達後親会社所有者持分 926,500
上場時増資額/直近純資産 38%
直近株価 1,720 想定発行価格
時価総額 2,683,200 千円
非支配株主持分 0
純有利子負債 △857,400
事業価値 1,825,800
潜在株 132,750 潜在株割合 8.5%
アセンティック(3565)の株価指標
指標 H29.1 予想
EBIT倍率 7.3 7.3
EBITDA倍率 6.9
営業利益PER 11.7 11.7
PER 20.8 20.8
PBR 3.1
アセンティック(3565)における従業員の状況
H29.2
連結人員 60
親会社単体人員 60
親会社単体平均年齢 39.2
親会社単体平均年収 4,740 千円
一人あたり年間粗利(連結) 10,612 千円
一人あたり年間販管費(連結) 6,470 千円