HKEホールディングスによる日立国際電気(6756)向けTOBの分析

2017/04/27

企業分析

H29.4.26にHKEホールディングスが日立国際電気(6756)を公開買付することが公表された。

適時開示日の日経新聞朝刊にTOB実施の記事が出たため26日の日立国際の株価は前日比11%上昇し終値は2,675円であった。

よって、TOB価格2,503円は結果として時価に対して6.4%のディスカウント値段となった。

HKEホールディングスはKKRファンドが実質的に保有する当TOBの目的会社である。

KKRは大企業からの子会社・事業部門のカーブアウト(事業の切り離し)・独立 支援に注力しており日本ではインテリジェンス、パナソニックヘルスケア、パイオニア、カルソニック等の案件を手がけていた。

買付者(HKEホールディングス)と日立製作所は本公開買付けに応募しないこと、TOB実施後の株式併合により対象会社株を対象会社へ売却することを合意している。

よって、HKEホールディングスがTOB実施のために必要とする資金は124十億円である。

今回のスキームで特徴的なことはTOB価格と日立からの自己株買取価格の単価が一致していないことが挙げられる。

対象会社の少数株主保護の観点と自己株取得の際のみなし配当課税の利用がポイントとなる。

対象会社の株式価値総額は2,150億円と確定しているため、日立製作所が対象会社へ自己株として売却する金額は(2150億円ー1,242億円=908億円)÷日立持株となり一株あたり1,710円とTOB価格よりも下落する。

また、公開買付者はの成膜プロセスソリューション事業を吸収分割により取得し、残存事業(映像・通信ソリューション事業)については日立製作所とJIP社に株式を20%ずつそれぞれ87.68億円で売却する予定であるとのことである。
これにより、HKEホールディングスは資金の一部(87.68億円×2)を回収することが可能となる。

87.68億円÷0.2=438億円が残存事業(映像・通信ソリューション事業)の株式価値であることから、成膜プロセスソリューション事業の株式価値は1,242億円-438億円=804億円と見ることができる。

直近決算期であるH29.3期の映像・通信ソリューション事業の調整後営業利益は1,102百万円、成膜プロセスソリューション事業の調整後営業利益は13,708百万円であった。

また、対象会社は日立から優先出資として105億円を受け入れる前提である。



【TOB当事者】
TOB対象者 日立国際電気(6756)
TOB実施者 HKEホールディングス
【公開買付期間】
2017/8くらい~
【買取株式】
適時開示公表時株価 2,675
TOB価格 2,503
ディスカウント (6.4%)
直近発行済株数 102,703,392 自己株除く
公開買付者既保有 -
既保有割合 0.0%
下限買取株式数 24,816,632 24.2%
上限買取株式数 49,633,263 48.3%
下限買収額 62,116 百万円
上限買収額 124,232 百万円
【買取新株予約権】
TOB価格 -
直近新株予約権残数 -
買収額 - 百万円
【TOB対象会社である日立国際電気(6756)の財務内容】
現預金 54,828 百万円
有利子負債 2,281 百万円
純資産 100,416 百万円
総資産 204,656 百万円
営業利益 17,500 百万円 予想
最終利益 11,400 百万円 予想
ROE 11.4%
ROA 5.6%
PBR(直近時価前提) 2.74
PBR(TOB価格前提) 2.56
利益/時価総額 4.1%
PER(直近時価前提) 24.1
利益/TOB価格総額 4.4%
PER(TOB価格前提) 22.5
EPS(一株利益) 111.0
BPS(一株持分) 977.7