IPO予定のトランザス(6696)の財務分析と初値予想

2017/07/06

IPO

【想定発行価格の印象】
:直近Q業績が季節的変動要因であれば割安

【法人概要】
設立:1995年1月
本社所在地:神奈川県横浜市西区みなとみらい
事業内容:IoT端末や機器装置の製造販売及びシステム・サービスの提供並びに業務システム等の受託開発等
業種分類:電気機器
決算:1月、
上場市場:マザーズ
監査人:監査法人A&Aパートナーズ、監査報酬は750万円
主幹事証券:いちよし証券
社長:藤吉英彦、創立者、昭和48年生まれ


【実施する事業】

①IoTソリューションサービス
(直近29.1期 売上740百万円、29.4期1Q売上164百万円)

・映像配信分野:ホテル・病院、会社、官公庁むけに、VOD配信用ソフトウェア、テレビ会議・IPTVサービス用ソフトウェア、複数地点をつなぐライブ配信用ソフトウェアを提供

・販売業務支援分野:大型公共施設、娯楽施設、冠婚葬祭場むけに、マルチパネルディスプレイ、デジタルサイネージ、マルチパネルディスプレイ、タッチパネルディスプレイ等を提供

・作業支援分野:工場、開発パートナー向けにウェアラブルデバイスを提供



②IT業務支援サービス
(直近29.1期 売上310百万円、29.4期1Q売上57百万円)

業務システムの受託開発・メンテナンスサービスの提供とターミナル(コンピュータ機器類、周辺機器)の導入支援及びメンテナンスを実施。




【直近5年(H25.1期~H29.1期)連結なし】

売上高(単体):469百万円⇒1,051百万円へ拡大、ただし、H29.1期の伸びは大きくない

経常利益(単体):32百万円⇒184百万円へ拡大、ただし、H29.1期は20百万円程度の減益

最終利益は(単体):32百万円⇒111百万円へ拡大、ただし、H29.1期は10百万円程度の減益、過去5年間は安定して利益計上

総資産(単体):320百万円⇒702百万円、ROAも改善傾向にある

純資産(単体):185百万円⇒538百万円

従業員数(単体):21人⇒37人




【損益(過去2期+直近Q)】


(売上、売上総利益)

売上:直近通年期前期比2%増、直近四半期単純年換算前期比16%減と直近Q減少傾向にあるが、季節的要因か否かは不明

主な売り先は加賀電子、アルメックスがある。

粗利率:前々期43.1%、前期44.1%、直近四半期39.5%と直近Qの粗利率が低下している。売上減少分だけ売上原価固定費の負担が重くなったと考えられる。

主な仕入先は台湾のAccton Technology Corporationであり仕入比率は50%近くになっている。
売上原価のうち約半分が製品仕入であり1/4が労務費、その他外注費等である。

売上総利益:直近通年期前期比5%増、直近四半期単純年換算前期比25%減と直近Qで減少した。売上の減少、粗利率の低下が要因である。


(販管費、営業損益)

販管費:直近通年期前期比15%増、直近四半期単純年換算前期比4%減と直近Qは売上減少にともない減少している。

役員報酬、給与手当など人件費が大部分を占める。

営業利益:直近通年期前期比8%減、直近四半期単純年換算前期比57%減と減少傾向にある。
H28.1期は販管費負担の増加、H29.4期は売上高の減少が要因である。


(最終利益)

「最終利益÷営業利益」:前々期63.3%、前期62.8%、直近四半期67.4%と異状な変動はない。



【財政状態】
 

(財務諸表の特徴)

無借金であり純有利子負債(ipo資金受入後)は▲873百万円とキャッシュリッチである。自己資本比率86%と財務内容は安定している。

繰延税金資産について一時差異は全額税金資産として計上されている。


(ROAとROE)

直近決算期であるH29.4期の純資産と想定発行価格による増資と直近Q決算期の年度換算利益を前提としたROA、ROEはそれぞれ4.2%、4.6%と低い。
直近通年期であるH29.1期で9.2%、9.9%である。



(IPO調達資金が自己資本へ与える影響)

想定発行価格と公募株式数に基づく調達資金は574百万円であり、直近純資産に対して104%の自己資本増加となる。



【株価】


(将来見込み)

H29.1期、H29.4期ともに業績の伸び悩みが感じられるがIoTを駆使して実施しているビジネスの今後の広がりには期待できるかもしれない。


(PER指標)

直近決算期であるH29.4期の利益を単純年換算した利益と想定発行価格を前提としたPER(希薄化株式考慮済)は82.2倍である。
ただし、H29.1期通年水準では37.8倍と安い印象である。


(PBR指標)

直近決算期であるH29.4期の純資産と想定発行価格による増資を前提としたPBR(希薄化株式考慮済)は3.8倍である。


(その他)

想定発行価格による増資とH29.4期の単純年間換算営業利益に基づいたEBIT倍率は41.1倍であり、EBITDA倍率は29.8倍である。

 

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トランザス(6696)
(単位:千円) H28.1 H29.1 増減 H29.4 進捗/増減
売上高 1,028,122 1,051,654 23,532 221,680 21%
年間予想 886,720 25%
売上総利益 442,949 463,906 20,957 87,488 19%
販管費 249,143 285,906 36,763 68,390 24%
営業利益 193,806 178,000 △15,806 19,098 11%
年間予想 76,392 25%
減価償却費 56,404 46,561 △9,843 7,287 16%
 EBITDA 250,210 224,561 △25,649 26,385 12%
支配株主帰属利益 122,612 111,695 △10,917 12,864 12%
年間予想 51,456 25%
簡易営業キャッシュフロー 179,016 158,256 △20,760 20,151
年間予想 80,604
※年間予想はQ数値を年次に単純換算した金額
H28.1 H29.1 H29.4 予想
売上総利益率 43.1% 44.1% 39.5%
営業利益率 18.9% 16.9% 8.6% 8.6%
支配株主帰属利益率 11.9% 10.6% 5.8% 5.8%
最終利益÷営業利益 63.3% 62.8% 67.4% 67.4%
トランザス(6696)の財政状態
H29.4
現預金等 299,810
流動資産 554,120
流動負債 92,002
 流動資産ー流動負債 462,118
 うち現金短借以外 162,308
有利子負債(流動) 0
有利子負債(固定) 0
 有利子負債計 0
ネット有利子負債 △299,810
固定資産 88,247
固定負債 0
純資産 550,365
非支配株主持分 0
親会社所有者持分 550,365
流動比率 602%
固定長期適合率 16%
自己資本比率 86%
有利子負債比率 0%
トランザス(6696)の利益指標
H29.1 H29.4 予想
ROE 9.9% 4.6% 4.6%
ROA 9.2% 4.2% 4.2%
トランザス(6696)の株式数,時価総額の見込み
上場前発行済株式 2,608,000 自己株式除く
うち売出株数 360,000 当選枚数
上場時発行株式 480,000 オーバーアロットメント含 8,400
引受価額 1,196.0
上場時調達見込額 574,080 千円
調達後親会社所有者持分 1,124,445
上場時増資額/直近純資産 104%
直近株価 1,300 想定発行価格
時価総額 4,014,400 千円
非支配株主持分 0
純有利子負債(ipo資金受入後) △873,890
事業価値 3,140,510
潜在株 164,000 潜在株割合 5.3%
トランザス(6696)の株価指標
指標 H29.1 H29.4 予想
EBIT倍率 17.6 41.1 41.1
EBITDA倍率 14.0 29.8
営業利益PER 23.8 55.3 55.3
PER 37.8 82.2 82.2
PBR 3.8
トランザス(6696)における従業員の状況
H29.6
連結人員 40
親会社単体人員 40
親会社単体平均年齢 37.8
親会社単体平均年収 5,234 千円
一人あたり年間粗利(連結) 8,749 千円
一人あたり年間販管費(連結) 6,839 千円