IPO新規上場大阪油化工業(4124)の財務分析と初値予想

2017/09/01

IPO

【想定発行価格の印象】
:化学分野の株価は安めであるが、同業他社と比べてもやや割安

【法人概要】
設立:1962年2月
本社所在地:大阪府枚方市春日西町
事業内容:各種素材の精密蒸留
業種分類:化学
決算:9月
上場市場:JASDAQスタンダード
監査人:あずさ監査法人
主幹事証券:野村證券
社長:堀田哲平、昭和54年うまれマスミューチアル生命保険を経て当社入社、会長は堀田修平

【実施する事業】

化学物質のわずかな沸点の差を利用して混合物から目的とする物質を分離・精製する精密蒸留を実施。

スマートフォンやメガネ等のレンズ、医薬品や化粧品、自動車等の顧客の最終製品の一部や顧客の研究開発分野において利用されている。


売上は以下の3つで区分している。

「研究開発支援」:顧客の研究開発部門の支援を行うサービス

「受託加工」:基礎研究段階からスケールアップした蒸留等の中・大型の蒸留装置による製造規模の蒸留及びそれに付随するサービス

「プラントサービス」:顧客が自社で蒸留を行うための支援サービス


【受注高】

①研究開発支援
(直近H29.6期3Q 受注168百万円/受注残0.1百万円、H29.3期受注180百万円/受注残27百万円 )

②受託加工
(直近H29.6期3Q 受注575百万円/受注残79百万円、H29.3期受注950百万円/受注残226百万円 )



【直近5年(H24.9期~H28.9期)】

売上高:1,160百万円⇒1,043百万円と若干の減少

経常利益:71百万円⇒219百万円と増加

最終利益は:8百万円⇒167百万円と増加

総資産:639百万円⇒1,073百万円と拡大

純資産:500百万円⇒804百万円

従業員数:19人⇒35人




【損益(過去2期+直近Q)】


(売上、売上総利益)

売上:直近通年期前期比1%減、直近四半期単純年換算前期比17%増

主な売り先は東レ・ダウコーニング、住友商事ケミカル、東洋紡、三井化学でありそれぞれ10~20%を占め分散している。

粗利率:前々期38%、前期48%、直近四半期45%と比較的変動幅が大きい。

売上原価のうち材料費が3割~4割、人件費が25%、その他が経費(減価償却費、消耗品費)である。

売上総利益:直近通年期前期比27%増、直近四半期単純年換算前期比10%増と増益を継続しげいる。


(販管費、営業損益)

販管費:直近通年期前期比8%増、直近四半期単純年換算前期比6%減と抑えられている。

H28.9期の販管費278百万円のうち、研究開発費が55百万円、役員報酬が35百万円、給与手当てが38百万円、運賃が22百万円、支払手数料が25百万円である。

営業利益:直近通年期前期比64%増、直近四半期単純年換算前期比31%増と増益継続。


(最終利益)

「最終利益÷営業利益」:前々期65%、前期75%、直近四半期65%

H27.9期は特別損失として固定資産処分損16百万円(機械装置10百万円、撤去費用6百万円)を計上している。
また、税金のうち税額控除の割合が大きくH28.9期で税前利益の12%を税額控除している。

【財政状態】
 

(財務諸表の特徴)

化学事業であり有形固定資産を502百万円程度保有するものの、無借金であり財務内容は非常に良好で安全性が高い。

繰延税金資産について一時差異のうち大部分は資産計上している。


(資本政策)

直近では動きはなくH29.5月に10分割したのみである。


(ROAとROE)

直近決算期であるH29.6期の純資産と想定発行価格による増資と直近Q決算期の年度換算利益を前提としたROA、ROEはそれぞれ11.7%、12.7%と資産利益効率は良好である。



(IPO調達資金が自己資本へ与える影響)

想定発行価格と公募株式数に基づく調達資金は588百万円であり、直近純資産に対して64%の自己資本増加となる。

うち、220百万円はパイロットプラントとしての連続蒸留塔の新設に利用するとのこと。



【株価】


(将来見込み)

売上は横ばいであるものの、増益はここ数年で継続している。
比較的キャッシュを保有しており、上場により資金確保もあるため有効な資金利用によりこの後の伸びが期待できるかもしれない。


(PER指標)

直近決算期であるH29.6期の利益を単純年換算した利益と想定発行価格を前提としたPER(希薄化株式考慮済)は10.3倍である。


(PBR指標)

直近決算期であるH29.6期の純資産と想定発行価格による増資を前提としたPBR(希薄化株式考慮済)は1.3倍である。


(類似会社比較)

化学分野はPER,PBRともに低く類似会社方式によると低めの株価となってしまう。

 

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大阪油化工業(4124)
(単位:千円) H27.9 H28.9 増減 H29.6 Q進捗
売上高 1,048,399 1,043,088 △5,311 918,809 88%
年間予想 1,225,079 75%
売上総利益 395,091 501,998 106,907 414,381 83%
販管費 258,871 278,331 19,460 195,440 70%
営業利益 136,220 223,667 87,447 218,941 98%
年間予想 291,921 75%
減価償却費 74,197 98,842 24,645 85,173 86%
 EBITDA 210,417 322,509 112,092 304,114 94%
支配株主帰属利益 88,628 167,915 79,287 143,704 86%
年間予想 191,605 75%
簡易営業キャッシュフロー 162,825 266,757 103,932 228,877
年間予想 305,169
※年間予想はQ数値を年次に単純換算した金額
H27.9 H28.9 H29.6 予想
売上総利益率 37.7% 48.1% 45.1%
営業利益率 13.0% 21.4% 23.8% 23.8%
支配株主帰属利益率 8.5% 16.1% 15.6% 15.6%
最終利益÷営業利益 65.1% 75.1% 65.6% 65.6%
大阪油化工業(4124)の財政状態
BS項目 H29.6
現預金等 302,167
流動資産 532,885
流動負債 122,254
 流動資産ー流動負債 410,631
 うち現金短借以外 108,464
有利子負債(流動) 0
有利子負債(固定) 0
 有利子負債計 0
ネット有利子負債 △302,167
固定資産 513,752
固定負債 0
純資産 924,383
非支配株主持分 0
親会社所有者持分 924,383
流動比率 436%
固定長期適合率 56%
自己資本比率 88%
有利子負債比率 0%
大阪油化工業(4124)の利益指標
H28.9 H29.6 予想
ROE 11.1% 12.7% 12.7%
ROA 10.3% 11.7% 11.7%
大阪油化工業(4124)の株式数,時価総額の見込み
上場前発行済株式 669,170 自己株除く
うち売出株数 260,000 当選枚数
上場時発行株式 349,500 OA含む 6,095
引受価額 1,683.6
上場時調達見込額 588,418 千円
調達後親会社所有者持分 1,512,801
上場時増資額/直近純資産 64%
直近株価 1,830 想定発行価格
時価総額 1,864,166 千円
非支配株主持分 0
純有利子負債(ipo資金受入後) △890,585
事業価値 973,581
潜在株 56,330 5.5% ←潜在株割合
大阪油化工業(4124)の株価指標
指標 H28.9 H29.6 予想
EBIT倍率 4.4 3.3 3.3
EBITDA倍率 3.0 2.4
営業利益PER 8.8 6.7 6.7
PER 11.7 10.3 10.3
PBR 1.3
大阪油化工業(4124)における従業員の状況
H29.7
連結人員 38
親会社単体人員 38
親会社単体平均年齢 37
親会社単体平均年収 5,932 千円
一人あたり年間粗利(連結) 14,540 千円
一人あたり年間販管費(連結) 6,858 千円
大阪油化工業(4124)上場までの資本政策
発行日 株数 発行価格 分割考慮 割当先
過年度 66,917
H29/5 602,253 10分割
IPO直前計 669,170
IPO時 349,500 1,830 ⇒想定発行価格
IPO後計 1,018,670 時価総額 1,864 百万円
分割日 分割数
H29/5 10
類似上場会社指標(H29.9.1時点)
銘柄 銘柄コード PER PBR
大阪有機化学 4187 15.2 1.1
JSR 4185 17.1 1.3
東レ 3402 17.0 1.6