IPO新規上場SGホールティングス(9143)の財務分析と初値予想

2017/11/06

IPO

想定発行価格の印象
減価償却方法変更あるが、ROEは同業他社と比べて高く、同業他社水準でのPER、PBRを前提とした想定発行価格にやや割安感あり。
SGホールティングス(9143)の概要
項目 内容
事業内容 一般貨物自動車運送事業等を行うグループ 会社の経営管理及びそれに付帯又は関連する業務等
業種別分類 陸運業
本店所在地 京都府京都市南区上鳥羽角田町
監査法人 トーマツ
主幹事 大和証券、三菱UFJモルガンスタンレー証券
決算月 3月
BB期間 H29.11.27 H29.12.1
上場日 H29.12.13
上場市場 未定
大株主① 従業員持ち株会 86,547,315株 うち売出 70,682,900株
大株主② 新生興産 37,872,000株 うち売出 0株
社長 町田公志、昭和31年うまれ、リクルート出身、平成22年SGリアリティ顧問
SGホールティングス(9143)の沿革
時期 内容
S40/11 佐川急便㈱を設立
H9/6 子会社設立しベトナム進出
H17/3 佐川フィナンシャル㈱を設立
H25/4 SGアセットマックス㈱を設立
H28/3 日立物流と資本業務提携し持分法適用会社化
SGホールティングス(9143)が実施する事業内容
項目 内容
デリバリー事業 輸送業務を実施
(販売実績) H29.3⇒ 738,186百万円 H29.9⇒ 383,001百万円
(営業利益) H29.3⇒ 39,647百万円 H29.9⇒ 22,217百万円
(人員) 36,143
ロジスティクス事業 物流業務の包括受託(サードパーティー・ロジスティクス、「3PL」)、国際輸送及び海外現地物流を実施
(販売実績) H29.3⇒ 110,471百万円 H29.9⇒ 56,627百万円
(営業利益) H29.3⇒ 786百万円 H29.9⇒ 664百万円
(人員) 6,506
不動産事業 物流不動産の開発・管理を実施
(販売実績) H29.3⇒ 17,513百万円 H29.9⇒ 7,863百万円
(営業利益) H29.3⇒ 5,146百万円 H29.9⇒ 4,019百万円
(人員) 49
SGホールティングス(9143)過去5年間の指標(単体)推移
項目 5年前 直近H29.3期
売上高 871,388百万円 930,305百万円
当期利益 23,430百万円 28,452百万円
総資産 557,798百万円 650,843百万円
純資産 166,119百万円 309,771百万円
従業員数 不明 45,194人


【損益(過去2期+直近Q)の分析】

(売上、売上総利益)

売上:直近通年期前期比99%、直近四半期単純年換算前期比104%である。

売上は増加傾向にある。


粗利率:前々期10%、前期9%、直近期Q10%とほぼ10%程度で推移している。

売上総利益:直近通年期前期比97%、直近四半期単純年換算前期比112%である。

直近四半期は売上増加により粗利も増加傾向にある。



(販管費、営業損益)

販管費:直近通年期前期比104%、直近四半期単純年換算前期比106%である。

H29.3期の販管費37096百万円のうち、給与が11,468百万円、租税公課が3,717百万円、減価償却費が3,902百万円を占めている。

また、H29.9期2Qの販管費19,664百万円のうち、給与が6,198百万円を占めている。

営業利益:直近通年期前期比92%、直近四半期単純年換算前期比117%である。

会計方針の変更により減価償却費負担が直近2Qでは少なくなっている点は留意すべきである。


(最終利益)

「最終利益÷営業利益」:前々期63%、前期58%、直近期Q58%で推移している。



【財政状態の分析】

(財務諸表の特徴)

直近決算における純有利子負債(マイナスは純キャッシュ)は81,654百万円(IPO資金調達後も81,654百万円)、自己資本比率は49%、有利子負債比率は48%である。

会社は減価償却に関する会計方針の変更を行い、H29年度から全ての有形固定資産について定額法にて償却を行なっている。この影響によりH29.9期の営業利益、経常利益、税前利益がそれぞれ3,378百万円増加している。

繰延税金資産についてH29.3期の一時差異(税額見合額)25,752百万円のうち退職給付負債が11,484百万円を占めている。

(資本政策)

上場に当たっての当選枚数は787,754枚であり、超大型である。

(ROAとROE)

直近決算期であるH29.9期の純資産と想定発行価格による増資と直近Q決算期の年度換算利益を前提としたROA、ROEはそれぞれ5%、11%である

また、上記純資産を基準として直近通期決算期の年度換算利益を前提としたROA、ROEはそれぞれ4%、10%である

(IPO調達資金が自己資本へ与える影響)

想定発行価格と公募株式数に基づく調達資金はゼロであり、直近純資産に対しての自己資本増加となる。

【株価の分析】

(将来見込み)

業績は横ばいであるが、ROAとROEが高い点が特徴的であり、一方、想定発行価格はPER,PBRで標準的なため将来の株価上昇は期待できそうである。


(PER指標)

直近Q決算期であるH29.9期の利益の年換算額と想定発行価格を前提としたPER(希薄化株式考慮済)は15.2倍である。

また、直近通年決算期であるH29.3期の利益と想定発行価格を前提としたPER(希薄化株式考慮済)は17.8倍である

なお、H29.9期において減価償却方法を定率法から定額法へ変更したことにより2Qの税前利益が3,378百万円前年比で増加している。

仮に、税引後利益率の57.5%を乗じると1,942百万円となる。2Q利益16,659百万円から差し引くと14,717百万円となりほぼH29.3期の利益水準と同レベルとなる。

(PBR指標)

直近Q決算期であるH29.9期の純資産額と想定発行価格を前提としたIPO増資を前提としたPBR(希薄化株式考慮済)は1.7倍である

(類似会社比較)

ビジネスモデルが近い上場会社のPERは15.25~77.2倍、PBRは0.84~1.69倍である。
また類似会社のROEは3.4~9.6倍、ROAは1.6~3.4倍である。

PERはバラけているがPBRは標準化されている印象である。
SGホールディングスはROEが高いことから高PBRも許容できそうである。




 

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SGホールティングス(9143)の業績推移分析
(単位:百万円) H28.3 H29.3 増減 H29.9 Q進捗
売上高 943,303 930,305 △12,998 481,485 52%
年間予想 1,155,564 42%
売上総利益 89,663 86,571 △3,092 48,615 56%
販管費 35,659 37,096 1,437 19,664 53%
営業利益 54,004 49,475 △4,529 28,951 59%
年間予想 69,482 42%
減価償却費 24,930 25,171 241 9,020 36%
 EBITDA 78,934 74,646 △4,288 37,971 51%
支配株主帰属利益 33,975 28,452 △5,523 16,659 59%
年間予想 39,982 42%
簡易営業キャッシュフロー 58,905 53,623 △5,282 25,679
年間予想 61,630
※年間予想はQ数値を年次に単純換算した金額
H28.3 H29.3 H29.9 予想
売上総利益率 9.5% 9.3% 10.1%
営業利益率 5.7% 5.3% 6.0% 6.0%
支配株主帰属利益率 3.6% 3.1% 3.5% 3.5%
最終利益÷営業利益 62.9% 57.5% 57.5% 57.5%
SGホールティングス(9143)の財政状態
BS項目 H29.9
現預金等 72,055
流動資産 263,650
流動負債 174,823
 流動資産ー流動負債 88,827
 うち現金短借以外 59,323
有利子負債(流動) 42,551
有利子負債(固定) 111,158
 有利子負債計 153,709
ネット有利子負債 81,654
固定資産 394,940
固定負債 160,831
純資産 322,936
非支配株主持分 24,799
親会社所有者持分 298,137
流動比率 151%
固定長期適合率 82%
自己資本比率 49%
有利子負債比率 48%
SGホールティングス(9143)の利益指標
H29.3 H29.9 予想
ROE 9.5% 11.2% 11.2%
ROA 4.3% 5.1% 5.1%
SGホールティングス(9143)の株式数,時価総額の見込み
上場前発行済株式 320,197,200 自己株除く
うち売出株数 78,775,400 当選枚数
上場時発行株式 0 OA含む 787,754
引受価額 1,453.6
上場時調達見込額 0 千円
調達後親会社所有者持分 298,137,000
上場時増資額/直近純資産 0%
直近株価 1,580 想定発行価格
時価総額 505,911,576 千円
非支配株主持分 24,799,000
純有利子負債(ipo資金受入後) 81,654,000
事業価値 612,364,576
潜在株 0 0.0% ←潜在株割合
SGホールティングス(9143)の株価指標
指標 H29.3 H29.9 予想
EBIT倍率 12.4 10.6 10.6
EBITDA倍率 8.2 8.1
営業利益PER 10.2 8.7 8.7
PER 17.8 15.2 15.2
PBR 1.7
SGホールティングス(9143)における従業員の状況
H29.10
連結人員 46,185
親会社単体人員 209
親会社単体平均年齢 38
親会社単体平均年収 7,079 千円
一人あたり年間粗利(連結) 2,526 千円
一人あたり年間販管費(連結) 1,022 千円
SGホールティングス(9143)上場までの資本政策
発行日 株数 発行価格 分割考慮 割当先
~H25/7 128,732,400
H25/7 4,761,000 210 70 従業員持ち株会
H27/1 -26,761,000 210 自己株取得+消却
H29/6 213,464,800 3分割
IPO直前計 320,197,200
IPO時 0 1,580 ⇒想定発行価格
IPO後計 320,197,200 時価総額 505,912 百万円
分割日 分割数
H29/6 3
類似上場会社指標(H29.11.6時点)
銘柄 銘柄コード PER PBR ROE ROA
ヤマトホールディングス 9064 77.2 1.7 3.4 1.6
日本通運 9062 16.2 1.2 6.9 2.4
日立物流 9086 15.3 1.5 9.6 3.4
セイノーHD 9076 19.2 0.9 4.9 3.1
福山通運 9075 27.8 0.8 4.2 2.3
銘柄 売上(百万) 営業利益(百万)
ヤマトホールディングス 1,466,852 34,885
日本通運 1,864,301 57,431
日立物流 665,377 28,207
セイノーHD 567,539 27,116
福山通運 257,900 11,100
SGホールティングス(9143) 930,305 49,475