IPO実施の岐阜造園(1438)の財務分析と初値分析

2016/11/01

IPO

【事業】

 公共工事をはじめ、法人からの発注による緑地工事、個人の住宅等の造園工事等を行い、取引
先は官公庁・法人・個人である。

 対象とする物件により「ランドスケープ」と「ガーデンエクステリア」に区分している。ガーデンエクステリアがランドスケープの倍以上の売上を占めているが、H28.6期はランドスケープが好調である。

 岐阜造園のH27.9期の売上高のうち、668百万円は大和ハウス向け、495百万円は積水ハウス向けであり依存度が高い。

 岐阜造園の従業員数は連結で98人、単体で68人、平均年齢39.8歳、平均年収は4,673千円である。
 
 IPO時の資金使途は設備資金として200,000千円、採用費及び人件費として100,000千円、広告宣伝費として30,000千円を充当する予定である。




詳細な数値分析はこちら



【損益】

 岐阜造園の損益推移についてH27.9期、H28.6期3Qはともに増収増益であり安定した成長を継続している。

 また、営業外収益として年間10百万円程度の受取地代家賃が計上され、営業外費用に不動産賃貸費用が年間5百万円程度計上されている。

 完成工事高の計上は、当連結会計年度末までの進捗部分について、成果の確実性が認められる工事については、工事進行基準(工事の進捗率の見積りは原価比例法)を、その他の工事については、工事完成基準を適用しているが、多額の未成工事支出金はなく、運転資金も多くは必要ない状況である。

 販管費のうち年間300百万円弱は給与手当であり最も多くを占める。

 岐阜造園の単体売上はH27.9期で2,813百万円(うち不動産売上337百万円)であり連結売上の67%を占める。単体売上原価のうち54%は外注費、30%は材料費であり、その他は労務費等である。
 単体の不動産売上原価としてH26.9期に外注費196百万円が計上されていた。
  


【キャッシュフロー】

 岐阜造園のキャッシュフローについてH27.9期の営業Cfは591百万円と前年比大幅増となっている。販売用不動産の減少313百万円が貢献している。

 なお、投資CFはH26.9期、H27.9期ともに営業CFと比べると少額であり積極的な投資は行なっておらず、定期預金の出し入れを行なっている程度である。

 この結果、岐阜造園のフリーCFは大幅なプラスであり、財務CFについても少額の有利子負債の返済と配当金の支払いをH26.9期に30百万円、H27.9期に15百万円実施している。
  


【財政状態】
 
 岐阜造園の財政状態についてH27.9期の販売用不動産(流動資産)が前期比313百万円減少している。その他、現預金の増加以外に資産項目について重要な変動はない。
 H27.9期の負債については大きな変動はなかった。

 岐阜造園のH28.6期の財政状態については直近期であるH27.9期と比較し販売用不動産が92百万円減少し71百万円となった。また、仕入債務(支払手形、工事未払金)も94百万円減少した。有利子負債は増加したものの、それ以上に現預金が増加しネット有利子負債はマイナス836百万円と資金は増加しつつあり充分な資金的余裕がある。

 岐阜造園の税効果について減損55百万円、役員退引41百万円に関する一時差異が大きいが評価性引当対象となっている。(金額はH27.9時点)
  


【株価】

 IPO時の発行価格は1,150円であり、当該株価を前提とするとPERは予想利益ベースで6.6倍、PBRはH28.6時点で0.8倍と割安であった。

 しかし、H29.9期の予想最終利益は209百万円であり当該利益に基づいたPERは8.1倍となり割安感は多少減ってしまう。

 初値は1,191円であり発行価格を3.5%だけ上回った。

 初値を前提とするとH28.9期利益に基づくPERは6.8倍、H29.9期予想利益に基づくPERは8.4倍となり割安感はあるが予想売上、利益が減収減益見込みであり将来的な魅力に欠けるかもしれない。
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岐阜造園(1438)

(単位:千円) H26.9 H27.9 増減 H28.6 進捗/増減
売上高 3,868,164 4,167,833 299,669 3,172,890 76%
年間予想 3,971,000 80%
売上総利益 943,515 1,007,391 63,876 828,056 82%
販管費 694,075 664,756 △29,319 505,527 76%
営業利益 249,440 342,635 322,529 94%
年間予想 321,000 100%
減価償却費 19,082 15,615 △3,467 10,754 69%
 EBITDA 268,522 358,250 89,728 333,283 93%
支配株主帰属利益 141,020 235,520 94,500 211,229 90%
年間予想 257,000 82%
岐阜造園(1438)のキャッシュフロー
営業CF 204,633 591,171 386,538 0%
投資CF △24,092 △45,542 △21,450 0%
 フリーCF 180,541 545,629 365,088 0 0%
財務CF △55,088 △35,757 19,331 0%
岐阜造園(1438)の財政状態
現預金 564,598 1,095,671 531,073 1,229,738 134,067
定期預金(流動) 0 0 0 0 0
有価証券(流動) 0 0 0 0 0
 現金同等物 564,598 1,095,671 531,073 1,229,738 134,067
流動資産 1,578,614 1,833,375 254,761 1,818,452 △14,923
流動負債 984,058 1,064,162 80,104 829,878 △234,284
 流動資産ー流動負債 594,556 769,213 174,657 988,574 219,361
 うち現金短借以外 295,450 △61,966 △357,416 7,176 69,142
有利子負債(流動) 265,492 264,492 △1,000 248,340 △16,152
有利子負債(固定) 139,110 119,578 △19,532 144,820 25,242
 有利子負債計 404,602 384,070 △20,532 393,160 9,090
ネット有利子負債 △159,996 △711,601 △551,605 △836,578 △124,977
固定資産 944,176 980,535 36,359 953,461 △27,074
固定負債 299,380 275,611 △23,769 302,567 26,956
純資産 1,239,352 1,474,137 234,785 1,639,468 165,331
非支配株主持分 0 0 0 0 0
親会社所有者持分 1,239,352 1,474,137 234,785 1,639,468 165,331
岐阜造園(1438)の利益指標 予想
ROE 11.4% 16.0% 13.2% 12.1%
ROA 5.6% 8.4% 8.6% 7.9%
ROI(営業利益/有利負債+時価) 11.5% 16.0% 20.0% 14.9%
岐阜造園(1438)の株式数,時価総額の見込み
上場前発行済株式 1,015,000 自己株式除く
上場時発行済株式 460,000
引受価額 1,058.0
上場時調達見込額 486,680 千円
調達後親会社所有者持分 2,126,148
直近株価 1,191 初値
時価総額 1,756,725
非支配株主持分 0
純有利子負債 △1,323,258
事業価値 433,467
潜在株 0 潜在株割合 0.0%
岐阜造園(1438)の株価指標
指標 予想 実績
EBIT倍率 1.4 1.3
EBITDA倍率 1.2
PER 6.8 7.5
PBR 0.8
岐阜造園(1438)のセグメント別業績
販売実績(千円) H27.9 増減 H28.6 進捗/増減
ランドスケープ 1,267,279 1,267,279 1,055,141 83%
ガーデンエクステリア 2,900,554 2,900,554 2,117,748 73%
セグメント 説明
ランドスケープ 公共工事、民間工事、また、工事施工後の緑地メンテナンス
ガーデンエクステリア 住宅メーカーとの共同による新規の大型分譲地での設計・施工、一般顧客向けの「パインズ」でのショールーム展開